トランプはなぜWHO脱退を検討しているの?

2020年代初頭から、アメリカはWHO(世界保健機関)との関係について再検討を続けてきました。

その中で、トランプ大統領がWHOからの脱退を検討した背景には、アメリカ国内外でのWHOの役割や行動に対する批判がありました。

中国との癒着への懸念

トランプ大統領は、WHOが中国寄りの姿勢をとっていると強く批判してきました。

特に新型コロナウイルス(COVID-19)の発生初期において、WHOが中国政府の対応を称賛したことが問題視されました。

COVID-19発生時の情報不足:

2019年12月に中国の武漢市で新型コロナウイルスが発生した際、WHOは当初、中国政府が提供する情報を基に「ヒトからヒトへの感染の証拠はない」と発表しました。しかし、その後、感染が急速に拡大し、WHOの判断の遅れが世界的なパンデミックを招いたと批判されました。

中国政府の透明性の欠如:

トランプ政権は、WHOが中国のデータを鵜呑みにして独立した調査を行わなかったことを問題視しました。特に武漢のウイルス研究所の安全管理に関する調査が不十分だと主張しています。

アメリカの過剰な資金負担

アメリカはWHOにとって最大の資金提供国であり、その負担の大きさに対する不満も脱退検討の理由の一つです。トランプ大統領は「アメリカが多額の資金を提供しているにもかかわらず、その利益を十分に享受していない」と主張しました。

WHOへの財政支援

2019年、アメリカはWHOに約4億ドルを拠出し、これはWHO全体の予算の約15%を占めていました。一方、中国の拠出額は約4000万ドルで、アメリカの10分の1に過ぎません。この不均衡が、WHOがアメリカよりも中国に配慮しているとの疑念を強めました。

新型コロナウイルスの対応への不満

トランプ大統領は、新型コロナウイルスに関するWHOの対応が遅すぎたと批判しています。特に、パンデミックの早期段階で十分な警告を発しなかったこと、感染拡大の責任を中国に問わなかったことが問題視されました。

パンデミック宣言の遅れ

WHOは2020年3月11日にCOVID-19をパンデミックと宣言しましたが、その時点ですでにウイルスは世界中に拡散していました。トランプ大統領は、WHOがもっと早く行動していれば感染拡大を抑えられたと主張しています。

マスク着用指針の変更

当初、WHOは一般市民のマスク着用を推奨しませんでしたが、後にこの方針を変更しました。このような指針の変遷が混乱を招いたと批判されています。

国際機関の改革の必要性

トランプ大統領は、WHOを含む国際機関全般が改革を必要としていると考えています。これらの機関が特定の国(特に中国)の影響を受けていること、また、効率的かつ透明性のある運営がなされていないことが理由です。

独立性の欠如

トランプ政権は、WHOが独立した意思決定を行うことなく、加盟国の中でも影響力の強い国(中国など)の意向を重視していると指摘しています。

不十分なガバナンス

WHOの執行委員会や意思決定プロセスが非効率であり、各国の利益を公平に反映していないと批判されています。

アメリカ第一主義の政策

トランプ大統領の「アメリカ第一主義」は、WHO脱退の検討にも影響しています。国際的な連携よりも、アメリカ国内の利益を優先する立場から、WHOのような国際機関への多額の資金提供を見直すべきだと考えています。

CDC(疾病対策センター)の強化

WHOに代わり、アメリカ国内の疾病対策機関であるCDCの機能を強化することで、国際的な感染症対策におけるリーダーシップを発揮する構想が示されています。

二国間協力の推進

トランプ政権はWHOを介した協力よりも、信頼できる国との二国間協力を推進することで、効率的な健康危機対応を目指しています。

トランプ次期アメリカ大統領がWHO脱退を検討する理由は、中国との癒着への懸念、アメリカの資金負担の過大さ、新型コロナウイルス対応への不満、国際機関の改革の必要性、そしてアメリカ第一主義の政策に基づいています。具体例を挙げると、COVID-19対応の失敗や財政負担の不均衡が特に大きな要因です。しかし、WHO脱退は、国際社会との連携を弱める可能性も指摘されており、アメリカの健康政策と外交戦略にとって大きな影響を及ぼす選択であることは間違いありません。

WHO(World Health Organization、世界保健機関)とは

WHO(World Health Organization、世界保健機関)は、国際連合(UN)の専門機関の一つで、世界の公衆衛生を促進し、健康問題への国際的な対応を調整する役割を担っています。1948年に設立され、スイスのジュネーブに本部があります。

主な役割と目的

  1. 健康増進: すべての人々が最高水準の健康を享受できるよう取り組む。
  2. 感染症や非感染症の対策: 病気の予防、管理、根絶を目指す。
  3. 緊急事態対応: パンデミックや自然災害などの公衆衛生上の緊急事態への対応。
  4. 研究とガイドライン: 医学研究の推進と健康政策の基準を設定。
  5. 国際協力: 各国の保健制度の強化と国際的な連携を支援。

主な活動

  • パンデミック対応: COVID-19やインフルエンザなどの感染症対策。
  • ワクチン普及: 予防接種プログラムの推進。
  • 健康指標の提供: 世界の健康状態に関するデータの収集と公表。
  • 政策提言: 国連加盟国に対する健康政策の助言。

資金源

WHOは加盟国からの会費と寄付金によって運営されています。加盟国の会費が全体の予算の約20%を占め、残りは民間セクターや他の国際機関からの寄付金です。

順位国名拠出額(百万ドル)
1アメリカ合衆国853.1
2イギリス464.4
3ドイツ292.5
4日本204.1
5ノルウェー173.5
6カナダ146.6
7中国85.8
8スウェーデン85.6
9オーストラリア61.2
10韓国41.7

WHOは世界保健デー(4月7日)を記念日に定め、世界的な健康問題に対する意識を高めるための活動を行っています。

2018~2019年のWHOへの拠出額上位10カ国は以下の通りです。

関連記事

おすすめ記事

  1. オーバーツーリズムは、特定の観光地に観光客が過度に集中することで、地元住民の生活や環境に悪影響を及…
  2. 再生可能エネルギーの普及促進を目的とした「再エネ賦課金」が、国民の経済的負担を増大させているとの指…
  3. 米国、輸入自動車に25%の関税を正式発表 米国のドナルド・トランプ大統領は3月26日、輸入自…
  4. ニセコバブルに黄信号 中国系高級リゾート建設が途中でストップ、破産手続き開始 北海道・ニセコ…
  5. 2025年3月24日から、新しい「マイナ免許証」が登場しました。これは、マイナンバーカードと運転免…

新着記事

  1. 中国人替え玉受験
    中国人留学生による日本大学受験不正:AI合成写真とカンニング業者の暗躍 日本の大学に留学する…
  2. 中国製ソーラーインバーターに潜むリスク:エネルギー安全保障への脅威 米国エネルギー当局は、中…
  3. ガソリン「暫定税率」をなぜ国は手放さないのか? ガソリン価格の高騰が家計を圧迫し、多くの国民…
  4. 外国免許切替、過去最多7万6千人 制度の課題と見直し検討へ 警察庁が発表した令和6年の運転免…
  5. 警察庁は、2026年4月1日から自転車の交通違反に対し「青切符」を導入し、反則金を科すことを決定し…
  6. 中国の尖閣諸島調査船活動に日本が強く抗議 国際法違反を指摘 沖縄県・尖閣諸島周辺で中国の海洋…
  7. 米中貿易協議、追加関税90日間停止で合意 米国と中国は、スイス・ジュネーブで行われた貿易協議…
  8. 白川郷、観光公害対策で駐車場予約制を導入へ 岐阜県白川村の世界遺産「白川郷」は、美しい合掌造…
  9. 「それでもお米は高いと感じますか?」JA山形の広告が波紋──米価高騰の背景と構造的課題を探る …
  10. 日本、2024年度経常収支が過去最大の黒字に — 円安と海外収益が追い風 2024年度の日本…
ページ上部へ戻る