国民民主党が提出した法案「自賠責保険料早期繰り戻し法案」は2023年5月、11月と繰り返し提出されている法案です。
自動車安全特別会計の役割と現状
自動車安全特別会計は、自動車ユーザーが支払う自賠責保険料から賦課金などを積み立て、交通事故の被害者支援や事故防止対策事業に活用される特別会計です。この財源は、特に交通事故による重度後遺障害者の生活支援など、社会的に重要な分野に使用されています。
しかし、平成6年度と平成7年度に財務省の求めに応じて、約1兆1200億円が一般会計に繰り入れられました。この措置は、当時の厳しい財政事情を背景としたものでしたが、その繰り戻しが現在までに約6000億円(利息を含む)も未完了であるという現状が問題視されています。この状況は、自賠責保険を支払う国民が本来受けるべき利益が損なわれていることを意味します。
噛み砕いた内容にすると、国民の支払った自賠責保険料から財務省が6000億円借りっぱなしで、しかも返済予定もない。借りパク状態です。
国土交通省と財務省の責任分担の問題
自動車安全特別会計は、国土交通省が所管する特別会計であり、本来であれば財源の管理や適正な運用を確保する責任があります。
一方、財務省は国家財政全体の管理を担い、厳しい財政状況を背景に特別会計の資金を一時的に一般会計に繰り入れる判断を行いました。
このやり取りにはいくつかの問題点があると思います。
特別会計の独立性侵害
特別会計はその名の通り、特定の目的のために設立された財源です。
一般会計への繰り入れは、特別会計の本来の目的を損ない、制度そのものへの信頼を揺るがす可能性があります。
特に、繰り戻しが未完了である現状は、国土交通省が所管する特別会計の独立性を脅かしていると言えます。
繰り戻し計画の不透明性
一般会計への繰り入れに対して、具体的な繰り戻し計画が十分に策定されていなかったことが問題です。
財務省と国土交通省の間で合意された繰り戻しスケジュールが明確でないため、国民に説明責任を果たせていない状況が続いています。
国民負担の軽視
自賠責保険料は全ての自動車ユーザーが義務的に支払うものであり、最終的には国民全体がその費用を負担しています。
特別会計の繰り戻しが遅れることで、本来国民が享受すべき利益が損なわれる結果となっています。
国民負担への影響と制度信頼の毀損
自賠責保険料は、一般市民が日々の生活の中で支払う必須の費用です。これを基に運用される特別会計の資金が不当に流用されたり、繰り戻しが遅延することは、自動車ユーザーの不満を招く原因となります。
また、特別会計の目的外使用が広く認知されることで、制度そのものへの信頼が損なわれる危険性もあります。
たとえば、「特別会計に積み立てても、いずれは一般会計に流用されるだけだ」という認識が広がることで、自賠責保険料の意義が疑問視される可能性があります。
自賠責保険料早期繰り戻し法案の意義
このような背景の中で、国民民主党が提出した「自賠責保険料早期繰り戻し法案」は、特別会計の独立性を守り、制度の信頼回復を図る重要な一歩といえます。法案では、繰り戻しを10年以内に完了するための具体的な措置を求めています。
浜口誠参議院議員の発言にもある通り、多くの国民が本来の特別会計への資金の早期返還を求めています。この法案が成立すれば、財務省と国土交通省の責任を明確化し、国民への説明責任を果たす一助となるでしょう。
特別会計の意義を守るために
特別会計の繰り戻し問題は、単なる財政運営の問題ではなく、自動車ユーザーをはじめとする国民全体の利益に直結する重要な課題です。
財務省と国土交通省の連携不足や責任分担の不明確さが招いた問題を解消するには、早期繰り戻しの実現と共に、特別会計の独立性を確保するための新たな仕組みが求められます。
「自賠責保険料早期繰り戻し法案」は、国民の信頼を取り戻すための第一歩です。政府には、国民の負担を軽減し、公正な制度運営を実現する責任があります。この問題を契機に、特別会計の運用が国民本位であることを再確認する必要があるでしょう。
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