
中国空母「遼寧」が南鳥島沖に初進出 太平洋への軍事的圧力を強化
南鳥島近海に空母進出、日本の安全保障に新たな懸念
2025年6月7日から8日にかけて、中国海軍の航空母艦「遼寧(りょうねい)」が、東京都に属する南鳥島の沖合を航行し、艦載機の発着艦を伴う訓練を行っていたことが明らかになった。防衛省が8日に発表したもので、同海域に中国の空母が確認されたのは初めてのケースとなる。
南鳥島は日本の排他的経済水域(EEZ)内に位置し、東京から約1,900kmも離れた日本最東端の有人島だ。この遠隔地にまで中国の空母が姿を現したことで、日本の防衛当局は強い警戒を示している。これまで中国空母は主に東シナ海や宮古海峡周辺を中心に活動していたが、今回の動きは太平洋正面でのプレゼンスを強化する狙いが透けて見える。
空母「遼寧」、艦載機発着艦の様子も確認
防衛省の発表によると、7日夕方から8日にかけて、「遼寧」は複数の駆逐艦などを従え、南鳥島の西南方向約300キロの海域を航行していた。衛星画像や監視機などによって、艦載戦闘機やヘリコプターが空母から発進・着艦する様子も確認されている。
中国海軍の空母が日本の太平洋側でここまで接近して作戦行動を行ったのは前例がなく、これにより日本政府内では「中国海軍の戦略が第一列島線を超えて、第二列島線以東にも及んできている」との分析が強まっている。
中国の軍事行動はどこまで広がるのか
近年、中国の海軍力拡張は急速に進んでおり、「遼寧」以外にも「山東」や最新鋭の「福建」といった空母の建造・実戦投入が進んでいる。2025年5月には、台湾東方のフィリピン海域で、中国海軍が多数の艦載機を用いて訓練を行ったと報道されていたが、今回の南鳥島沖の行動はその延長線上にあると見られている。
日本政府関係者は「中国の空母が今後も南鳥島沖を定期的に航行するようになれば、これは事実上の既成事実化となりかねない」と懸念を示している。中国による“プレゼンスの常態化”は、東アジア全体の安全保障環境を一段と不安定化させる恐れがある。
防衛省は警戒強化、外交ルートで懸念も伝達
今回の動きを受けて、日本の防衛省は海上自衛隊の艦艇および航空機による監視を強化しており、関係省庁間で緊急の情報共有も行われている。加えて、外務省を通じて中国政府に対し「深刻な懸念」を表明したことが明らかとなった。
防衛省関係者は、「南鳥島は我が国の排他的経済水域内にあり、軍事的プレゼンスを誇示するような行為は看過できない」としており、中国の行動が偶発的な軍事衝突や緊張のエスカレーションを招くことへの警戒を強めている。
東アジアの安全保障に与えるインパクト
今回の中国空母の南鳥島進出は、単なる航行にとどまらない戦略的意味を持つ。地理的に見れば、南鳥島はグアムと日本本土の間に位置しており、米軍の活動範囲とも重なる。ここに中国の空母が常態的に展開するようになれば、日米同盟にも新たな戦略的圧力が加わることは避けられない。
さらに、南鳥島沖は日本の深海資源開発の対象エリアでもあり、レアアースやコバルトリッチクラストなどの重要資源が眠っているとされる。中国がこのエリアへの関与を強めることで、資源面での安全保障にも新たなリスクが浮上することになる。
ネット上の反応
「南鳥島に空母が来るなんて、もう日本の周辺は全部中国に囲まれてるじゃん」
「これが“平和の進出”ですか。尖閣、宮古、南鳥島…日本政府は対処できてるの?」
「そろそろ南鳥島に自衛隊基地を作るべきじゃないか」
「中国は太平洋を自国の裏庭にするつもりだ。次はグアム周辺かも」
「日本のEEZにまで空母を展開するなら、こっちも防衛強化しないと話にならない」
求められるのは毅然とした抑止力
今回の南鳥島沖への中国空母「遼寧」の進出は、日本の安全保障上の地政学的バランスを大きく揺るがす出来事だ。防衛政策の強化や離島防衛の見直し、米国を含む同盟国との連携が一層重要となる。
防衛力強化と同時に、国際社会と連携し、海洋秩序を守るための外交的対応も必要だ。「自由で開かれたインド太平洋」という理念を、言葉だけではなく、現実の抑止力として実現することが求められている。
参考サイト
中国空母、南鳥島沖に初進出