
米トランプ政権は11日夜、中国製品への報復関税「相互関税」の一部から、スマートフォンなどの主要な電子機器を除外すると発表した。関税はすでに今月5日から発動されており、対象品目は一律10%、中国製品には最大125%の高率関税が課されている。だが、iPhoneをはじめとした米アップル製品への価格転嫁が現実味を帯びる中、消費者の反発や国内景気への悪影響を避ける意図がにじむ。
アップル製品に直撃の可能性
米国税関・国境警備局(CBP)の通達によれば、今回の除外対象はスマートフォンだけでなく、ノートパソコン、タブレット端末、外付けハードディスクなど広範な電子機器に及ぶ。アップルは主力製品のiPhoneを中国で生産しているため、関税の適用は製造コストに直結する。実際、一部の経済アナリストの間では、「iPhoneの販売価格が現在の約1,000ドルから2,000ドル以上に跳ね上がる可能性がある」との試算も出ていた。
仮に製造を米国内へ全面移転した場合、1台あたりの製造コストは約3,500ドルに達するとの見方もあり、現実的とは言いがたい。こうした事情を踏まえ、政権側も「国産化を促す」建前と「国内の物価上昇を避けたい」本音の間で、苦しい判断を迫られた格好だ。
「第1次トランプ政権」の再来?
今回の措置は、第1次トランプ政権下で行われた「制裁関税」の流れを思い起こさせる。2018年当時も、制裁対象の中にiPhoneなどが含まれるかどうかが注目され、最終的に米企業や消費者の反発を考慮して除外された経緯がある。今回も同様に、ハイテク企業や市場への影響を抑えるための“現実的な着地点”が模索されたと見られる。
背景に広がる中国依存と「脱・中国」
アップルはここ数年、中国への製造依存を減らす動きを強めている。とくにインドでは、iPhoneの組立工場の稼働が本格化し、2025年には米国内向け製品の半数以上をインドで生産する計画が報じられている。加えて、ベトナムやマレーシアといった東南アジア諸国への製造拠点の分散も進んでおり、今回のような通商政策リスクへの“耐性”を高める動きが加速している。
消費者の反応は“パニック買い”
とはいえ、米国内では「価格が上がる前に買っておこう」とする動きが広がり、一部のアップルストアでは週末にかけて買い物客が殺到。iPhoneやMacBookを求める“パニック買い”が発生した。価格の安定を伝える今回の発表に、ひとまず安堵する声が上がる一方、今後の追加関税や米中対立の行方に神経をとがらせる消費者も多い。
残る不安、そして“次の一手”は
今回の関税除外はあくまで「例外措置」であり、米中貿易摩擦の本質的な解決には至っていない。今後、どの製品が対象となるのか、どこまで除外が広がるのかは不透明なままだ。また、トランプ前大統領が再び大統領選に立候補する構えを見せている中、関税政策が政治的な争点として再燃する可能性もある。
ハイテク産業にとっては安堵の一手。だが、“関税の網”がいつどこに張られるか分からない緊張状態は、しばらく続きそうだ。
米の相互関税、スマホを対象外に iPhone価格急騰の反発回避
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