
4日、ニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均が前日比2,231.07ドル安の38,314.86ドルと急落した。1日の下げ幅としては2020年3月のコロナ・ショック以来、過去3番目の大きさだ。発端はトランプ米政権が突如発表した追加関税。これに中国が即座に報復措置で応じ、米中間の貿易摩擦が再燃。市場は世界的な景気後退のシナリオを織り込み始めた。
世界経済の主軸を担う二大国の対立激化に、投資家はリスク資産からの逃避を加速。この日は米国市場だけでなく、東京や欧州の主要市場でも株価が軒並み大きく下落し、まさに「世界同時株安」の様相を呈した。
ハイテク株に比重の高いナスダック総合指数も大きく値を下げ、前日比962.82ポイント安の15,587.79。S&P500種株価指数も322.44ポイント下落し、5074.08で引けた。これほどまでに幅広い銘柄が売り込まれるのは異例だ。
米中の火種は、トランプ前大統領が「米国の雇用と産業を守る」として発表した新たな関税政策。具体的には、中国からの輸入品に対し一律34%の関税を課すという強硬措置だ。これに対し中国もすぐさま反応し、米国からのすべての輸入品に同率の関税を課すと発表。両国の措置は4月10日から実施される見通しで、実体経済への影響は避けられそうにない。
中国財政省は今回の米国の方針について、「一方的で極めて不公平な貿易攻撃」と厳しく非難。国際貿易のルールを逸脱しているとの立場を示した。トランプ氏はこれに対して「中国の不当な経済慣行には断固たる措置を取る」と応戦する構えを見せており、両国の歩み寄りは当面期待できそうにない。
この貿易リスクを背景に、投資家心理は急速に冷え込んだ。市場では「2000年代初頭のITバブル崩壊や、2008年のリーマン・ショックに匹敵する重大局面に近づいている」との声も聞かれる。
株式市場の混乱は、商品市場にも波及している。この日、ニューヨーク・マーカンタイル取引所では原油先物価格が1バレル=61.99ドルまで急落。前日比で7%以上の下げとなり、2021年以来の安値圏に沈んだ。米中の対立激化が需要を冷え込ませるとの懸念が直撃した格好だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、「関税政策がインフレと成長の両面に影響を及ぼすリスクがある」との見方を示しており、FRBとしても今後の金融政策をめぐる判断が一層難しくなってくる。金利の引き下げ再開に含みを持たせる発言も出始めており、市場はFRBの舵取りに注目している。
安全資産への資金シフトも顕著だ。米国10年債利回りは4%を下回り、金(ゴールド)や円といった安全資産が買われている。JPモルガンなど一部の金融機関は、2025年末までに世界経済が景気後退に突入する可能性を「60%以上」と予測しており、警戒感が市場全体に広がっている。
今回の下落が一過性のものなのか、あるいは世界経済に長期的な影を落とす序章となるのか。鍵を握るのは米中両国の今後の対応だが、トランプ政権が再び「貿易戦争」に舵を切ったことで、世界は新たな経済リスクの時代に突入しつつある。