
4月3日、アメリカのドナルド・トランプ大統領が打ち出した新たな関税政策をめぐり、国内外で大きな反響が広がっている。トランプ氏は、記者団の前で「今や世界はアメリカのために何でもしてくれる」と発言し、自らの経済政策の効果に強い自信を示した。
今回発表された関税政策は「解放の日(Liberation Day)関税」と呼ばれ、すべての輸入品に対して一律10%の基本関税を課す内容だ。加えて、アメリカと貿易赤字を抱える約60の国々には、相互主義に基づいた追加関税が上乗せされる。
「これまでは我々が何か頼んでも“ノー”だった。しかし今では、彼らは我々のために何でもしてくれる」。トランプ氏のその言葉からは、貿易交渉における主導権を自らの手に取り戻したという実感がにじむ。
「アメリカで作れ」が大統領のメッセージ
トランプ大統領は、関税を回避したければ「アメリカ国内で製造することだ」と述べ、国内投資を呼びかけた。トランプ政権としては、企業に国内回帰を促すことで製造業の再生と雇用拡大を目指している。
実際、既に一部の大手企業が製造拠点の移転や再構築を検討しているとされる。大統領としては、これを次なる経済回復の“起爆剤”にしたい考えだ。
さらに、トランプ氏はバイデン前政権下のアメリカ経済を「重病患者」に例え、「手術は終わった。これからは非常に活気ある素晴らしい国になる」と述べ、自らの政策による経済再建を誇示した。
市場は混乱、同盟国も反発
だが、発表直後の金融市場は冷静とは言い難かった。ニューヨーク証券取引所では、主要株価指数が一時急落。特に製造業や輸入依存の高い小売業関連銘柄は大きく値を下げた。
また、主要貿易相手国からは反発の声が次々と上がっている。EUは「必要であれば対抗措置を取る」と表明し、カナダも「一方的な措置には強く抗議する」と強調。メキシコや韓国も対応を検討中だとされる。
「自由貿易の原則に真っ向から反する政策だ」。ある外交官はこう語り、アメリカが再び「保護主義の道」へと傾くことへの懸念を示した。
経済界と専門家の視線は冷ややか
経済界やアナリストの見解は厳しい。輸入コストの上昇は、製品価格の値上げを通じて消費者に跳ね返る。インフレ圧力が強まり、個人消費の減退に繋がる可能性がある。
「長期的に見れば、貿易戦争は誰も勝者にならない」。米経済学会のベンジャミン・モリス氏はそう警鐘を鳴らす。報復関税の応酬が続けば、世界経済全体に悪影響を及ぼすという見方は広がっている。
次の焦点は2028年大統領選
今回の“関税ショック”は、政治的にも大きな意味を持つ。トランプ氏は2024年の大統領選で再選を果たし、現在2期目の任期を務めている。2028年の大統領選挙には自身は出馬できないが、影響力のある後継者の擁立に向けて、今から布石を打っていると見られる。
副大統領のJ.D.バンス氏はその筆頭候補とされており、最近のインタビューでは「出馬も視野にある」と語っている。ただし「まずはトランプ大統領と相談する」として、慎重な構えを見せている。
一方、民主党陣営も2028年に向けて再起を図っており、カマラ・ハリス前副大統領やカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏らの名前が水面下で取り沙汰されている。
“最後の一撃”となるか、それとも火種か
トランプ大統領にとって今回の関税政策は、自身の経済政策の「総仕上げ」とも言える施策だ。これを成功例として後継者に引き継がせ、レガシーとして残す狙いもあるだろう。
ただし、世界がこの強硬路線にどう反応するかは予断を許さない。貿易摩擦が激化すれば、国際関係にも深刻な亀裂を生むことになりかねない。
「世界は今やアメリカのために何でもする」という言葉が、ただの強がりだったと証明されるのか、それとも時代の転換点だったと語られるのか——今後の展開が注目される。