米国、輸入自動車に25%関税 トランプ氏「並外れた何か」あれば見直しも

トランプ氏、追加関税に「交渉の余地」示唆 株価急落にも強気の構え

ドナルド・トランプ米大統領は3日、記者団の取材に応じ、輸入品への大規模な追加関税について、「並外れた何か」と引き換えに見直しの余地があると発言した。自動車と部品への25%の関税を新たに発動し、近く半導体や医薬品にも対象を広げる構えだ。世界の市場はこれに強く反応し、株価は大きく下落。一方で、トランプ氏は「これは予想されていた動きだ」と冷静な姿勢を見せた。

関税は「偉大な交渉手段」

大統領専用機「エアフォース・ワン」内で記者団に語ったトランプ氏は、今回の関税が単なる保護主義ではなく、交渉を引き出すための「強力な手段」であると主張。「他国が交渉を望むようになったのは、関税のおかげだ。関税は我々にとって偉大な交渉力だ」と語った。

「並外れた何かを提示すれば、関税の減免に応じる可能性がある」とも述べ、相手国に“譲歩”を促したかたちだ。具体的な条件には言及しなかったが、貿易赤字の是正や産業の国内回帰を促す材料を求めていると見られる。

自動車、半導体、医薬品まで網羅

今回の関税措置では、自動車とその部品に対して25%の追加関税が課されることになった。年間で約4,600億ドル(約69兆円)にのぼる輸入額が影響を受けるとされており、その規模は前例を見ない。さらにトランプ氏は、半導体や医薬品といった「経済安全保障上の重要品目」にも同様の措置を適用する方針を示唆。発表は「ごく近い」と述べており、事実上の通告となった。

一方で、カナダやメキシコ、一部の医薬品分野などは例外扱いとなる可能性があることも明らかにしており、「交渉の余地」があることを強調している。

株式市場は激しく反応

こうした一連の発表を受けて、3日のニューヨーク株式市場は大きく揺れ動いた。ダウ平均株価は1,679ドル安と前日比約4%下落。S&P500指数も4.8%、ナスダック総合指数は6%超の下げとなり、2023年以降で最大規模の急落となった。

この動きについて問われたトランプ氏は「予想されたことだ」と一言。むしろ「米国経済は活況を呈している。関税で雇用が戻り、製造業が再生する」と楽観的な見方を崩さなかった。

自動車業界には早くも影響

米国内の自動車業界も、ただちに反応を見せている。フォード・モーターは一部車種で値引きキャンペーンを打ち出し、価格上昇の抑制に乗り出した。ドイツ系のメルセデス・ベンツやボルボも、米国内生産の強化を検討している。

一方、フォルクスワーゲンは「輸入手数料」という名目で米国向け販売価格への上乗せを発表。結果として消費者に転嫁される形となり、「実質的な値上げ」との批判も出ている。

国際社会の反応は警戒感

国際通貨基金(IMF)は、こうした一連の措置が「世界経済にとって重大なリスク」と警鐘を鳴らしている。特に、新興国市場では資本流出の懸念も高まっており、すでにカナダやEU、韓国など複数の国々が対抗措置を検討している。

カナダ政府は、トランプ政権の関税発表を受けて即座に対抗関税を表明。対象品目にはアルミニウム製品や農産物が含まれており、米加間で新たな貿易摩擦が勃発する可能性もある。

「強いアメリカ」実現のための賭け

トランプ氏の掲げる「アメリカ・ファースト」政策は、内政的には一部の支持を集めている。特に、ラストベルト(米中西部の製造業地帯)などでは、製造業の雇用回復への期待が根強い。

だが、グローバル経済に依存する米国の産業構造を考えると、長期的には輸出企業への打撃や物価上昇を招くリスクがある。専門家からは「選挙を意識した短期的なポピュリズム政策」との指摘も出ており、今後の経済指標や市場の動向が、トランプ政権の真価を問う試金石となるだろう。

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