
ドイツ連邦議会は2025年3月18日、国防支出を債務制限外として扱うための憲法改正案を可決しました。これにより、ドイツ政府は今後、大規模な軍事支出が可能となり、再軍備に向けた大規模な投資を行うことができるようになります。この決定により、ドイツはその防衛能力を劇的に強化する道を開いたことになります。
ドイツの首相候補であるフリードリヒ・メルツ氏は選挙後の記者会見で、「米国からの独立を達成することが最優先課題だ」と語り、欧州防衛の自立を強調しました。これは、ドイツが将来に向けて欧州内で自らの防衛能力を高め、米国への依存を減らすべきだという立場に立つことを示唆しています。
そのため、ドイツ政府はキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の合意の下、国防とインフラの強化に向けて、歴史的規模の財政パッケージを立案しました。このパッケージには、特別防衛費として最大2,000億ユーロ(約32兆円)、そしてインフラ基金として5,000億ユーロ(約81兆円)が盛り込まれています。特にインフラ基金の一部は、ドイツの鉄道や道路といった産業基盤の修復・強化に使用され、間接的に防衛産業の強化にも寄与することが期待されています。
今回の憲法改正案が可決されたことに対して、NATOのジャンス・ストルテンベルグ事務総長は「これは歴史的な合意だ」と称賛し、ドイツの決断が欧州防衛にとって大きな一歩であると評価しました。さらに、米国の防衛専門メディアであるDefense Newsも、この決定が債務制限に対する長年のタブーを打破し、ドイツが防衛とインフラに必要な予算を確保できるようになったことを重要な前進だと報じました。
しかし、これには米国からの反発が予想されます。トランプ政権下では、欧州が自らの防衛産業を強化する動きに対して懸念が示されており、米国の防衛産業が受ける影響が心配されています。欧州の再軍備に対して米国製兵器の需要が減少する可能性があるため、米国の防衛産業界からは反発の声が上がるでしょう。ただし、米国の防衛産業がすぐに困難な状況に直面するわけではなく、欧州の自立が進むことで、米国の防衛産業はアジアにおける戦略的な強化に集中できるという見方もあります。
さらに、欧州が自立した防衛産業を育成することは、長期的には米国にとっても戦略的な利点をもたらす可能性があります。欧州が防衛に関して自立することで、米国はアジアの同盟国とともに新たな戦略的な焦点を合わせることができ、より効率的な軍事展開が可能となります。
ドイツの決定は、単なる防衛の強化にとどまらず、NATO内での役割や欧州全体の安全保障の在り方をも変える可能性を秘めています。米国との防衛協力の在り方や、欧州がどのようにして防衛面での自立を進めていくのかが、今後の国際政治において重要な議題となるでしょう。
ドイツの再軍備に向けたこの憲法改正は、単に国防力を強化するだけでなく、欧州防衛の未来に大きな影響を与える決定であり、今後の国際安全保障環境にとって重要な転換点となるに違いありません。