NHK、AI翻訳で尖閣諸島の『釣魚島』表示 精度不足で再発防止策を強化中

NHKの国際放送において、尖閣諸島の中国側呼称「釣魚島」が中国語字幕に表示された問題が報じられました。NHKは、英語放送の音声を基に、GoogleのAI翻訳機能を使用して9言語の字幕を提供していましたが、その字幕の中で誤って「釣魚島」と記載されたことが発覚しました。特に、2025年2月10日に放送されたニュースの中で、「沖縄県の尖閣諸島」「日本が実効支配する尖閣諸島」という内容が中国語字幕に変換される際に、この誤りが起きました。

NHKはその問題に迅速に対応し、同日中にすべての字幕サービスを終了しました。報道によると、字幕に「釣魚島」と表示されたのは、放送の中で中国側の反応を伝える際であり、NHKスタッフがライブ配信をチェック中にこの誤りに気づき、すぐに修正措置をとったとのことです。NHKは、正確な情報発信が重要であるため、この誤りがあった以上はサービスを停止することが適切だと判断し、再発防止に向けた対策を講じる方針です。

NHKはまた、過去1週間分の字幕について調査を行い、同様の誤りが確認されたことも報告しています。この問題は、昨年8月に発生した中国籍の外部スタッフが放送中に尖閣諸島を「中国の領土」と主張するなど、以前にもトラブルがあったことを受けて、再発防止策を強化するための一環として実施されたものです。今後はAI音声による読み上げが本格導入される予定ですが、このシステムとは異なるため、影響はないとしています。

尖閣諸島問題

尖閣諸島(中国名:釣魚島)は、東シナ海に位置する無人の島々であり、日本、中国(中華人民共和国)、台湾(中華民国)の間で領有権を巡る争いが続いています。この問題は、各国の主張と歴史的背景が複雑に絡み合っています。

日本の主張

日本政府は、尖閣諸島が歴史的にも国際法上も日本固有の領土であり、現在も実効支配していると主張しています。1895年1月、閣議決定により正式に日本領土に編入され、その後、民間人による開拓や経済活動が行われました。第二次世界大戦後、尖閣諸島は米軍の統治下に置かれましたが、1972年の沖縄返還に伴い、日本に返還されました。

中国の主張

中国(中華人民共和国)は、尖閣諸島(釣魚島)が古くから中国の領土であり、明朝時代から中国漁民が利用していたと主張しています。また、1895年の下関条約で台湾とその付属島嶼が日本に割譲された際、釣魚島も含まれていたとしています。中国は、第二次世界大戦後のカイロ宣言やポツダム宣言に基づき、釣魚島が中国に返還されるべきだと主張しています。

台湾の主張

台湾(中華民国)も、尖閣諸島(釣魚台列嶼)が自国の領土であると主張しています。台湾の主張は、中国(中華人民共和国)と類似しており、歴史的に中国の一部であったとしています。しかし、台湾は独自の政府を持つため、独自の立場から領有権を主張しています。

歴史的背景

尖閣諸島の領有権問題は、1970年代に東シナ海で石油資源の存在が報告されたことを契機に、各国の関心が高まりました。それ以前は、領有権問題は顕在化していませんでした。1971年、中国と台湾が相次いで領有権を主張し、以降、三者間での対立が続いています。

近年、尖閣諸島周辺では各国の海上保安機関や軍事力の活動が活発化しており、緊張が高まっています。この問題は、東アジアの安全保障や国際関係において重要な課題となっています。

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