
フェンタニル密輸に日本が関与か 駐日米大使が警鐘「中国共産党が意図的に関与」
アメリカで深刻な社会問題となっている合成麻薬フェンタニルの密輸をめぐり、グラス駐日米大使が6月26日、「中国共産党が関与しており、日本も経由地になっている可能性がある」と警告する投稿をX(旧Twitter)で発信した。投稿は英語と日本語の両方で行われ、「国際薬物乱用・不法取引防止デー」にあわせた形だ。
「フェンタニルやメタンフェタミンといった合成薬物は、日米両国において多くの命を奪っています。そして、中国共産党はこの危機を意図的にあおっています。(中略)われわれはパートナーである日本と協力することで、こうした化学物質の日本経由での積み替えや流通を防ぎ、両国の地域社会と家族を守ることができます」
この投稿には「#国際薬物乱用・不法取引防止デー」のタグが付けられており、米政府がこの日を利用して日本への協力を強く促していることがうかがえる。
名古屋に拠点か 中国組織による密輸の可能性を報道
大使の発信と前後して、日本経済新聞は同日、「フェンタニルを米国に違法に輸出していた中国の組織が、日本国内に拠点を構えていた疑いがある」と報道した。報道によれば、名古屋港を通じて違法な化学物質が輸送され、組織の中枢メンバーは日本国内で法人を設立し、実質的な物流指示を日本から出していた可能性があるという。
この報道が事実であれば、日本が中国とアメリカをつなぐ“中継地”として機能していたことになり、水際対策の甘さが問われる事態だ。
日本政府「押収事例はなし」も、密輸未遂の懸念拭えず
財務省関税局は27日、「これまで日本国内でフェンタニルの押収実績はない」と明らかにした。一見すれば日本は関係ないとも読めるが、逆に言えば水面下で密輸ルートとして利用されていても摘発できていない可能性がある。名古屋港の利用実態や関連法人の活動履歴などの詳細は、政府としても今後調査が必要となるだろう。
日本政府関係者は「今後も関係省庁と連携し、不正薬物の取り締まりを強化していく」と述べた。
米国ではフェンタニルの被害が深刻化 中国からの供給に警戒
アメリカではフェンタニルが原因の死亡者が急増しており、社会全体を巻き込む大問題となっている。2024年に公表された米財務省の報告書では、「中国がフェンタニルおよびその前駆体の主要供給国」であると名指しされた。こうした背景から、トランプ政権時代には中国、メキシコ、カナダに対して追加関税が課されるなど、経済面からの圧力も強化されている。
とはいえ、日本が関与しているという疑いが米政府から公的に指摘されたのは今回が初めてであり、グラス大使の発信は、米国の危機意識の強さと同時に、日本に対する具体的な警戒感を示したものと言える。
スパイ防止法の欠如や不十分な法整備が課題に
日本では、外国勢力による違法活動を取り締まるための法的枠組みが脆弱であるという指摘も多い。たとえばスパイ防止法や外国エージェント登録制度といった制度が未整備なまま放置されているのが実情だ。こうした制度の欠如が、中国系組織による違法活動の温床になっているとの見方もある。
SNS上では、
「中国共産党が関与しているならば、与党の親中派議員の責任も問われるべきだ」
「アメリカの要請を受け、日本がどこまで本気で対応するか見ものだ」
といった声が広がっており、政治への波及も避けられない情勢だ。
日本政府の本格調査と米国との連携強化
現時点では、日本国内でのフェンタニル密輸の実例は確認されていないものの、「拠点があった可能性」は日米の両報道機関が指摘している。仮に事実であれば、国家としての信頼性、治安対策の信憑性が問われかねない。
今後の焦点は、以下の3点に絞られる。
- 名古屋拠点の実態解明
中国系組織が設立したとされる法人の活動記録、物流記録、関連人物の調査が急務。 - 関係省庁の連携強化
警察庁・財務省・厚生労働省・外務省などが情報共有を行い、水際対策を抜本的に見直す必要がある。 - 外交バランスと法整備の加速
グラス大使の発言は日中関係にも影響を与える恐れがあるため、外交面での丁寧な対応と、法制度の早急な整備が求められる。
フェンタニル問題は「対岸の火事」ではない
これまで日本ではフェンタニルは“無縁”とされてきたが、名古屋が中継拠点として使われていた可能性が出てきたことで、状況は一変した。SNSでの反応や米大使の異例の発信からもわかるように、日米双方にとって“身近な脅威”となっている。
国内でのフェンタニル流通が本格化する前に、水際で対処できるか。それが今、日本に問われている。政府と関係機関には、実態解明と再発防止への具体的な行動が求められる。