新型ウイルス「HKU5-CoV-2」が中国で発見 致死率最大35%のMERS系、ヒト感染リスクに警戒

新型ウイルス「HKU5-CoV-2」が中国で発見 致死率最大35%のMERS系、ヒト感染リスクに警戒

新型コロナウイルス「HKU5-CoV-2」発見:中国で確認された“次のパンデミック候補”に警戒

中国で新たに発見されたコロナウイルス「HKU5-CoV-2」が、わずかな変異で人間にも感染する可能性があることが、アメリカ・ワシントン州立大学の研究で明らかになりました。研究者たちはこのウイルスが「人への感染にあと一歩」と指摘し、感染拡大のリスクを強く警告しています。

HKU5-CoV-2は、いわゆるメルベコロナウイルス(merbecovirus)に分類され、中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすMERS-CoVとも近縁です。MERSは2012年に初めて確認され、これまでに世界27カ国で858人の死亡が報告されており、致死率はおよそ35%とされています。

この新型ウイルスは2024年2月、中国国内でコウモリから検出されたもので、現時点で人間への感染は確認されていないものの、研究チームは「ヒトの喉や鼻、口の粘膜にあるACE2受容体にウイルスが結合する可能性がある」としています。HKU5-CoV-2が感染・複製できることが、気道および腸管の細胞モデルで実験的に確認されており、少しの遺伝子変異で人間への感染能力を獲得する恐れがあるとされます。

この研究を主導したワシントン州立大学のマイケル・レットコ教授は、「HKU5ウイルスはこれまでほとんど研究されてこなかったが、私たちの研究によりその感染特性が明らかになった」と説明。「人間に感染するにはあと少しの進化段階が残されているだけかもしれない」との見解を示しました。

このウイルスの発見は、SARSやCOVID-19が拡大した経緯と重なる部分も多くあります。野生動物が狭い空間に押し込まれ、生きたまま売買される中国の市場環境は、これまでも新興感染症の温床として批判されてきました。HKU5-CoV-2も、コウモリを起源とすることが分かっており、「ウイルスの動物から人間への“種の壁”を越えるリスクが現実に迫っている」と警鐘が鳴らされています。

ウイルスのスパイクタンパク質がACE2受容体に結合できるようになると、感染能力が大幅に高まることが分かっており、実際にHKU5-CoV-2はすでに一部の動物種での感染・複製能力を持っていることから、今後のウイルス進化には厳重な監視が必要です。

ただし、現在のところヒト間での感染例は報告されておらず、実験段階でも感染力はまだ限定的であると専門家は見ています。英インペリアル・カレッジの免疫学者、ゲイリー・マクリーン博士は「ラボ内での実験結果は興味深いが、自然界での感染力が確認されたわけではない」と冷静な分析を示しています。

とはいえ、これまでのパンデミックの教訓から学ぶならば、「予防は最大の防御」であるべきでしょう。HKU5-CoV-2がMERSと類似の特徴を持ち、かつ人間への適応能力を進化の中で獲得する可能性がある以上、世界各国の研究機関や保健当局は早期発見と封じ込めのためのモニタリング体制を整えることが急務です。

また、今回の研究ではAIを活用したウイルス進化予測やACE2結合シミュレーションが有効だった点も注目に値します。今後はウイルス研究において、AI・バイオインフォマティクス・実験生物学が連携する「ハイブリッド型分析」が主流となる見通しです。

「HKU5ウイルスはこれまであまり注目されてこなかったが、今後は注意を払うべきだ。MERSのように致命的な結果を招く可能性もある」
(マイケル・レットコ教授)

「科学的に見て、人への感染リスクは依然として小さいが、これを放置するのは賢明ではない」
(英エセックス大学・エフスタシオス・ギオティス博士)

このHKU5-CoV-2の発見が意味するのは、次なるパンデミックはすでに“準備段階”にあるということかもしれません。人間社会は今、再び自然界からの警告にどう応えるのか、その選択を迫られています。

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