沖ノ鳥島周辺に眠るレアメタルと中国の調査船活動――資源争奪で日中関係再び緊張

沖ノ鳥島周辺に眠るレアメタルと中国の調査船活動――資源争奪で日中関係再び緊張

中国、「沖ノ鳥島は岩」と再主張 日本のEEZを否定 資源めぐり緊張再燃

中国政府は2025年5月27日、沖ノ鳥島について「岩であり、排他的経済水域(EEZ)を生じさせるものではない」との立場を改めて明言した。これは同島の周辺海域で中国の海洋調査船が活動した件に関連して日本側が抗議したことへの反発とみられ、日中間で再び海洋権益を巡る摩擦が表面化している。

外交会見での発言:中国「干渉の権利はない」

中国外務省の毛寧報道官は同日の記者会見で、沖ノ鳥島が「人が居住できず、経済活動の基盤にもなり得ない岩礁である」との見解を強調。「日本には中国の調査活動に干渉する法的根拠は存在しない」と述べ、日本の対応を批判した。

同報道官は、調査活動が「公海での合法的な科学調査である」と主張し、海洋法上の航行や調査の自由に基づいていると説明した。これに対し、日本政府は外交ルートを通じ、EEZ内での無断調査は容認できないと抗議している。

現場の状況:中国の調査船に日本の海保が対応

今回の件では、5月26日夕方、沖ノ鳥島から東へ約270km離れた海域で、日本の海上保安庁が中国の海洋調査船を発見。船は海中にケーブルのような装置を投入しており、調査活動を行っていたと見られる。日本側は「同意のない調査活動は認められない」と無線で伝え、中止を求めた。調査船はその日の深夜までにEEZ外へ退去したとされる。

「島」か「岩」か:国際法の解釈がカギ

沖ノ鳥島は日本最南端の領土であり、東京都小笠原村に属する。干潮時にも水面上に出る自然地形として、1990年代以降、日本政府はコンクリート護岸や観測施設を整備し、「島」としての実効支配を強めてきた。

国連海洋法条約第121条では、「人が居住でき、経済的生活を維持できる自然地形である島」はEEZや大陸棚を設定できると定義されている。一方「岩」は、それらの権利を持たないとされる。中国はこの点を根拠に、日本のEEZ主張を否定している。

沖ノ鳥島周辺は“資源の宝庫”

沖ノ鳥島を巡る緊張の背景には、海洋法の解釈だけでなく、同地域に眠るとされる豊富な資源がある。日本政府や研究機関によると、沖ノ鳥島のEEZ内には、マンガン団塊やコバルトリッチクラスト、レアアース泥などの海底鉱物資源が広範囲に分布している。

特に、2012年以降に行われた調査では、レアアースの含有量が世界最大規模に達する可能性があると発表された。レアアースは電気自動車、風力発電、半導体など、次世代産業に不可欠な戦略資源であり、その採掘権を日本が確保することは、経済安全保障にとって極めて重要な意味を持つ。

このため、沖ノ鳥島を「島」としてEEZの主張を認めさせることは、日本にとって経済的利益のみならず、国のエネルギー・安保戦略の中核とも言える。

中国の動きは“既成事実化”か

一方、中国の動きは、東シナ海や南シナ海で見られるように「既成事実化」戦略の一環とも受け止められている。実際に海洋調査船を派遣し、継続的な活動を行うことで、「公海での自由な利用」をアピールし、日本の主張を相対化しようとしている可能性がある。

また、中国は自国の需要を満たすために、レアアース資源の確保にも積極的だ。既にアフリカや東南アジアで影響力を強めているが、今後は日本周辺の海域にも視線を向けてくることが予想される。

国際社会と今後の展開

日本は今後も、沖ノ鳥島を「島」として国際社会に主張し続ける構えだ。すでに国内では、資源調査や環境保護のためのインフラ整備が進められており、国際法上の正当性を強化する動きも見られる。

ただし、国際司法裁判所などに持ち込む場合、これまでの例では一方の主張が通らないケースも多く、慎重な外交判断が求められる。

また、沖ノ鳥島問題は、インド太平洋地域における日中の戦略的駆け引きの縮図とも言える。米国などの同盟国と連携し、透明性と法の支配を重視した外交姿勢を打ち出すことが、国際世論の支持を得る鍵となる。

ネット上の反応

SNS上では、今回の中国の発言と行動に対して、疑問と警戒を抱く声が多く見られる。

「沖ノ鳥島を岩扱いするなら、南シナ海の人工島はどう説明するの?」
「中国の調査は明らかに資源狙い。日本はもっと積極的に守るべき」
「日本政府の対応が甘い。言葉だけじゃなくて、現場の行動が必要」
「海保が対応してくれたのはありがたい。国民がもっと注目すべき問題」
「レアアースの話がもっと知られてほしい。沖ノ鳥島は未来の宝庫だよ」

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