
2028年、日本はビザ免除旅行者に入国前審査を導入へ
観光大国日本、ビザ免除旅行者にも入国前審査を実施
日本政府は、2028年からビザ免除対象国から訪れる旅行者に対し、入国前審査を義務付ける方針を発表した。この新制度は、観光客の急増に伴う治安問題やオーバーツーリズムへの対策として導入される。法務省によれば、この審査はアメリカの電子渡航認証システム(ESTA)をモデルにしており、訪日予定者は事前にオンラインで個人情報や旅行目的を申告し、入国審査を受けることとなる。
この取り組みは、観光客増加による治安維持と、犯罪予防を目的としている。近年、訪日外国人による犯罪が増加しており、特に短期滞在者による窃盗や詐欺が問題視されている。法務省は、過去の犯罪歴や不法滞在歴が確認された場合、入国拒否を行うことで犯罪抑止を図るとしている。
対象国は71カ国、米国や韓国も含む
新たに導入される入国前審査の対象は、ビザが免除されている71カ国。米国、韓国、シンガポール、オーストラリアなど、日本人にも人気の旅行先が含まれている。これらの国の旅行者は、日本を訪れる前にオンラインで申請を行い、認可を受けた後でないと日本に入国できない仕組みとなる。
日本政府は、この審査制度により、訪日客の安全を確保しつつ、犯罪リスクを最小限に抑えることを目指している。また、観光業界に対しては、この新たな手続きが観光客数に与える影響を最小限に抑えつつ、信頼性の高い観光地としてのイメージを強化するよう働きかける予定だ。
なぜ入国前審査が必要なのか
近年、日本を訪れる外国人観光客は急増しており、2024年には3,687万人に達し、前年比47.1%の増加を記録した。この観光ブームは日本経済に大きく貢献している一方で、治安や地域社会への悪影響も顕著になっている。特に以下の問題が浮き彫りとなっている:
- 外国人観光客による犯罪の増加:窃盗、詐欺、暴行などの犯罪が増え、特に短期滞在者が犯行後にすぐ帰国するケースが多い。
- 迷惑行為の横行:京都・祇園では、舞妓の無断撮影や、私有地への不法侵入が問題となっている。また、富士山周辺では観光客が道路に飛び出して写真を撮る危険行為が多発。
- オーバーツーリズムの深刻化:人気観光地でのゴミ問題や交通渋滞が常態化し、地域住民の生活に影響を与えている。
こうした課題に対応するため、政府は事前審査による入国管理の強化を決定した。審査では、犯罪歴のほか、過去の日本での不法滞在歴も確認し、問題があれば事前に入国を拒否する仕組みを整える。
観光産業への影響と対応
日本政府は2030年までに年間6,000万人の外国人観光客誘致を目指している。この新たな審査制度は、観光客数の減少につながるのではとの懸念もあるが、政府は「質の高い観光客を迎えるための措置」と説明している。
観光業界からは、手続きが複雑化することで旅行者に負担を与えるのではないかとの声もある。しかし、法務省は申請はオンラインで簡単に行えるよう設計され、迅速に結果が通知されるため、観光への影響は最小限にとどまると強調している。
また、政府は観光地のインフラ整備を強化し、観光客が安心して訪れることができる環境を整える方針だ。観光地でのゴミ問題や迷惑行為対策も強化し、地域住民と観光客の共存を目指している。
今後の課題:入国審査制度の運用と監視
2028年に導入される入国前審査制度は、観光客の安全確保と治安維持を目指すものだが、その運用には課題も残る。特に以下の点が注目されている:
- 不正申告への対応:虚偽の情報を申請する旅行者への対応方法をどう確立するか。
- 運用コスト:新制度の運用には多額の費用がかかるとみられており、その負担をどう軽減するかが課題。
- 地域社会への説明:観光地での治安維持やオーバーツーリズム対策としての効果を住民に理解してもらう必要がある。
日本は観光大国として成長を続ける一方で、持続可能な観光地としての信頼性を確保しなければならない。そのためには、観光業界や地域住民との連携を強化し、観光客のマナー向上を図る啓発活動も重要だ。
訪日観光客も共にルールを守る意識が重要
新たな入国前審査制度は、日本を訪れる観光客にとっても自身の安全を守るための仕組みである。観光客は日本の文化やマナーを尊重し、地域住民との共存を意識した行動が求められる。
日本は観光立国としてさらなる成長を目指すが、その過程で地域社会との調和も不可欠だ。観光客、地域住民、そして観光業界が一体となって、持続可能な観光地としての日本を築き上げることが求められている。