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- 白タク・闇レンタカー・中国人専用風俗――観光立国ニッポンが食い物にされる日

「中国人観光客が増えれば、日本経済が潤う」。そう語られることが多い昨今だが、本当にそれだけで済む話なのだろうか。現場に足を運び、実態をこの目で確かめた筆者は、そうした表面的な“経済効果”の裏に、極めて深刻な現実があることを思い知らされた。
訪日観光客数がコロナ前の水準を超える勢いで回復する中、2025年1〜2月だけでも日本を訪れた外国人は約703万人。そのうち170万人以上が中国人で、前年同期と比べてほぼ倍増している。政府が進めるビザ緩和政策も後押しし、今後さらに加速する見込みだ。
しかし、その影で蠢く“もう一つのインバウンド”がある。
深夜の羽田で見た「白タク天国」
3月、冷たい雨が降る深夜1時過ぎの羽田空港国際線ターミナル。日中に比べて人影は少ないが、天津や上海からの深夜便が到着するタイミングになると、外は一転して騒がしくなる。大型ワンボックスカーが次々に乗り入れ、歩道沿いにずらりと列を作る。だがそのナンバープレートは、緑ナンバーではなく、れっきとした“白ナンバー”――つまり自家用車だ。
車から降りてきた中年の中国人男性が、ターミナルから出てきた若いカップルと手短に中国語でやり取りをし、スーツケースを乱雑にトランクに放り込む。そのまま何のためらいもなく乗車。握手も笑顔もない。どう見ても“家族の再会”には見えないやり取りだ。
そこに現れたパトカー。赤色灯を回しながら「白タク行為は違法です」と拡声器で警告する。しかし車列に動揺の色はない。警告など無視して、作業は淡々と続けられていた。
「警察は完全になめられているんですよ」
隣の駐車場でEVタクシーを充電していた日本人運転手が、そう吐き捨てる。警察に通報しても“口頭注意”で終わり、本腰を入れて取り締まる気配はないという。
「客を取られるのも腹が立つが、そもそも奴らが長時間、乗降スペースを占拠しているのが邪魔なんです。交番の目の前でも堂々と客を拾ってる。これじゃ、真面目にやってる方がバカを見る」
「ほぼ摘発されない」巧妙な仕組み
この“白タク稼業”が成り立つのには理由がある。2年前から白タク運転をしているという中国人男性・王さん(仮名)は、こう明かす。
「日本の法律では、有償で人を運んだ証拠がない限り違法と認定できません。だから、警察に聞かれても“友人です”と客と口裏を合わせれば、それで終わり。WeChatで連絡し、支払いもアプリ上で完結させる。現金のやり取りをしないから、証拠も残らない」
さらに、警察の取り締まり情報も“仲間内”で共有しているため、事前に警戒態勢をとることができるのだという。
「運が良ければ月に50万以上稼げる。雇われていた時は30万ちょっと。法律にも、会社にも縛られない。そりゃあ戻れないですよ」
“格安で融通がきく”から選ばれる
一方で、なぜ利用者が違法と分かっていながら白タクを選ぶのか。答えはシンプルだ。「安くて便利」だからである。
羽田から都内まで、正規のタクシーなら1万5000円ほどかかるところ、白タクなら1万円前後に抑えられるケースが多い。しかも、途中で寄り道をお願いすれば応じてくれる上、中国語で意思疎通ができる安心感もある。特に初来日の高齢者や子連れにとっては“使い勝手がいい”のだ。
「闇レンタカー」と観光の新たな盲点
加えて最近では、正規の手続きを経ない“闇レンタカー”の利用も広がっている。
在日中国人のガイド業・蔡さん(仮名)によると、中国のSNSでは、保証金を送ると鍵の入ったキーボックスの場所と番号を教えてくれる業者が多く存在しているという。貸し出されるのは白ナンバーの自家用車。運転免許証の確認もなし。
なぜ正規のレンタカーを使わないのか。それは中国が国際免許を発行していないため、日本での運転がそもそも認められていないからだ。地方の観光地を訪れたいが、公共交通機関が不便――そうした需要に“闇レンタカー”が応えている。
医療ツーリズムと「公金の海外流出」
さらに驚いたのが「人間ドックツーリズム」の実態だ。PET-CTや内視鏡検査を含む3泊4日の医療観光パッケージが、航空券・宿泊費込みで170万〜220万円と高額にもかかわらず、高い人気を誇っている。
問題は、こうした医療ツーリズムに対応するために、地方の医療機関が中国企業からの資金提供を受けて“買収”され、人間ドック専用クリニックへ転換している例があるということだ。
医師育成や医療設備の整備には、日本の税金が投じられている。それが日本人ではなく、中国人富裕層の健康のために使われているとすれば、「公金の国外流出」とも言える構図である。
さらに悪質な例では、人間ドックで重大な疾患が見つかった場合、労働ビザなどを手配して長期滞在を可能にし、高額医療制度を利用して格安で治療を受けるケースもあるという。
「中国人専用風俗」そして感染症の懸念
“生”に敏感な人がいる一方で、“性”に執着する訪日客もいる。
首都圏には「中国人専用風俗店」が数十軒存在し、中国語ポータルサイトでは店舗の詳細な紹介がされている。料金は50分〜1時間で1万8000円〜2万2000円が相場。日本人女性も働いており、「演技不要・ゆるいシフト・立ちんぼより楽」という理由で、この業界に流れるケースもあるという。
こうした“裏風俗”の拡大に伴い、性感染症の流入も無視できない。特に梅毒は、訪日外国人の急増と並行するようにして感染数が右肩上がりに。2024年には報告数が1万4000件を超えた。
中国ではすでに2010年代から梅毒の感染爆発が報告されており、日本での流行も決して“偶然”とは言い切れない状況だ。
本当にこのままでいいのか
訪日外国人による消費は、日本経済にとって確かにプラス面がある。しかし、白タクや闇レンタカー、風俗や医療ブローカーなど、法の網の外で利を得る構造が温存されれば、その利益は納税もされずに国外へと流れてしまう。
観光立国を目指すというのであれば、その果実がきちんと国内で還元され、ルールの中で健全に循環する仕組みを整えるべきではないか。
桜咲くこの季節、再び中国人観光客の波が押し寄せる。だがその笑顔の裏側に、日本のルールと善意を食い物にする影があることを、私たちは見落としてはならない。
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