外国に買われる日本の農地 2024年は175ヘクタールに倍増
- 2025/10/1
- 報道・ニュース

都道府県別の事例と地域傾向
農林水産省の調査によれば、2024年に外国法人等が取得した農地の事例は、茨城県行方市(0.9ヘクタール)、山梨県甲州市(0.2ヘクタール)、愛媛県西条市(0.2ヘクタール)の3地域でした。
これらの取得例は、地方の農地のなかでも、比較的交通アクセスが良いか、地域内で農業インフラが一定程度整っている地域が対象になりやすい可能性を示唆します。ただし、それぞれの地域で、取得された地が実際に営農されているか、どういう作物・形態で使われるのかは公表されていません。
また、都道府県別で「どれくらい取得されているか」の精密統計は公表されていないため、他県での取得実態は未公開です。農水省は今後、農地台帳と国籍・在留資格情報を紐付けて、地域別・累積取得データを整備したいとしており、将来的には、各都道府県・市町村レベルでの取得比率が見える化される可能性があります。
地方によっては、山間部・中山間地の休耕地や後継者不足地域がターゲットになりやすいとの指摘もあります。こうした地域は地価が比較的低いため、取得コストが抑えられ、参入しやすい面があるからです。ただし、実際に取得が認められるかどうかは、許可審査の判断基準や地元自治体の対応に左右されます。
海外との比較:豪州・米国でどうなっているか
日本と比べて、豪州(オーストラリア)や米国では、外国所有の農地がより広い割合を占めています。これらの国の制度や状況と比較することで、日本の現状の意味やリスクが見えてきます。
豪州(オーストラリア)
豪州では、農地のかなりの部分が外国資本の関与を受けています。2023年時点で、外国所有の農地(または外国の関与を持つ農地)が 約12.9% にのぼるという報告があります。
州・準州別に見ると、北部地域(ノーザンテリトリー州など)では外国所有の割合が高く、29%近くを占める例もあります。タスマニア州や西オーストラリア州でも比率が高い地域があります。
豪州では土地所有の透明性を高める制度が整備されており、外国による取得には政府審査(Foreign Investment Review Board=FIRB)を経る必要があります。さらに、取得後も利用状況の報告などが義務付けられている場合があります。
豪州の状況は、日本よりもはるかに外国取得の割合が高く、制度的・運用的な対応が既に進んでいる点で参考になります。
米国(アメリカ合衆国)
米国でも外国者・外国法人が農地を所有しており、その割合は着実に増えています。2023年時点で、外国人・外国法人が所有する農地は 約4,580万エーカー(約185万ヘクタール)に達し、これは私有農地全体の 3.5%前後 に相当します。
所有割合は州によって大きく異なります。テキサス州では外資所有が多く、メイン州では全州農地の中でかなりの割合が外国所有という統計もあります。
米国には「Agricultural Foreign Investment Disclosure Act(AFIDA)」という法律があり、外国投資家は農地取得・売却を報告する義務があります。 加えて、国家安全保障上の懸念から、中国など「競合国」による土地取得を制限する議論も出ています。
米国の場合、農地取得は投資・再生可能エネルギー用途(土地に風力・太陽光設備を設けるなど)との絡みも強く、単なる農作目的以外の用途転換可能性を念頭に審査される例もあります。
米国比較からは、外国取得データ公表制度と審査制度の整備、用途監視の仕組みが重要であることが分かります。
日本の農地を守るために必要な今後の課題と対策
都道府県別事例は限定的ですが、茨城・山梨・愛媛のような地域で実例が出ていることは、地方農地の取得可能性を示しています。今後、全国的な取得傾向を把握するには、都道府県別・市町村別統計の整備が不可欠です。
海外事例を見ると、豪州では農地の10%前後、米国では私有農地の3~4%が外国所有という規模があります。日本の0.004%という割合とは桁違いです。これらの国々は、外国取得に関する透明性制度、取得後の用途監視の仕組み、国家安全保障との連携を制度設計しており、日本もそれらを参照する価値があります。
日本においては、制度の運用と監視を強化し、地方自治体・農業委員会への支援を拡充することが求められます。加えて、既存保有地の国籍把握と用途継続性の追跡、地域農業との調和を確保するためのルールづくりも急務です。