ポール・クルーグマンが予測するAIブームの行方:暴落ではなく救済策で終息か

ポール・クルーグマン、ノーベル経済学賞を受賞した著名な経済学者が、現在進行中のAIブームについて、1990年代のドットコム・バブルと似ていると指摘しています。

しかし、クルーグマンが強調するのは、その終わり方は全く異なるかもしれないという点です。彼の見解によると、今のAIブームは、ただの熱狂で終わるのではなく、むしろ「巨大テック企業救済策」という形で収束していく可能性があるとのことです。

AIブームとドットコム・バブルの類似点と違い

AIブームがドットコム・バブルに似ているという意見には、一理あります。どちらも、新技術への過剰な期待と、それに対する投資家の熱狂が特徴的だからです。ドットコム・バブルの時代、人々は新たに登場したインターネット企業に夢を見ました。それと同じように、今も多くの人々がAIの未来に期待を抱いています。

ただし、クルーグマンが指摘するもう一つの大きな違いは、AIの今の主役がすでに支配的な立場にあるテック大手たちだということです。例えば、GoogleやMicrosoft、Amazonなどの企業はすでにAI技術を使いこなしており、これらの企業がさらにその影響力を強めていくという構図になっています。これは、かつてのドットコム・バブル時のスタートアップ企業のように、新たな企業が急成長するというシナリオとは異なります。

政治とテック企業の新たな関係

さらに、クルーグマンが指摘しているもう一つの重要なポイントは、現在のテック企業が政治と密接に関係しているという点です。過去のシリコンバレーでは、テック業界は比較的政治から遠ざかっていました。しかし、今では、イーロン・マスク(テスラ)、マーク・ザッカーバーグ(Facebook)などの企業のトップが、政策に強い影響力を持つようになっています。このような政治的な背景が、AIブームの進行に与える影響を無視することはできません。

AIブームの終わり方

AIブームがどう終わるのか、クルーグマンは「バブルが弾けるのではなく、巨大テック企業救済策で終わるかもしれない」と予測しています。これが意味するのは、例えば政府がAIインフラに対して大規模な投資を行い、テック企業に支援をするという形で、AI関連の投資が続く可能性が高いということです。こうした支援が、むしろAI市場を安定させ、暴落を防ぐ一因となるかもしれません。

他の経済学者たちの視点

一方で、他の専門家たちもこのAIブームには懐疑的な見方を示しています。例えば、MITのダロン・アセモグル教授は、AIが今後の10年間で置き換える職業は5%程度に過ぎないと予測しています。彼は、AIに対する過剰な期待が、企業の投資やテック株の暴落を引き起こす可能性があると警告しています。


クルーグマンも他の経済学者も、AI技術が経済に与える影響は非常に大きいと考えていますが、その発展には慎重であるべきだという立場です。過度な期待と過剰な投資が、新たなバブルを生み出し、最終的に大きな経済的リスクを引き起こすことは避けるべきです。もし、AIが本当に経済を安定させる力を持つのであれば、そのためには政府や企業のバランスの取れた政策と戦略が欠かせません。

いずれにせよ、今後AI技術がどのように進化し、それが経済にどう影響を与えるのかは非常に興味深い課題です。

ノーベル賞経済学者、AIブームは「救済」によって終わるかもしれないと予測

関連記事

おすすめ記事

  1. 「ニセコ化」した野沢温泉村で現れる観光公害とその影響 長野県の野沢温泉村は、昔から温泉と自然…
  2. 参院選の争点「外国人政策」 各党の公約から見える日本の将来像 2025年の参院選では、「外国…
  3. 再エネ賦課金、過去最高の月1600円超 2032年まで増加見通し
    再エネ賦課金、過去最高へ 月1600円超の上乗せ負担に「国民の限界超えた」と専門家が警鐘 太…
  4. 中国が東シナ海で資源開発を既成事実化 日本政府は“抗議止まり”の弱腰外交に終始 日本と中国が…
  5. 減税は日本経済の処方箋になるか? ――インフレ恐怖と古い経済学から脱却を 私たちの…

新着記事

  1. 米ペンシルベニア州USスチール工場で爆発 死者2人・負傷10人 日本製鉄傘下で発生 米国東部…
  2. 日本移住で大学まで学費無料?中国で密かに広がる“教育支援”悪用の動き 厚生労働省の統計によれ…
  3. 日米関係に新たな火種か 米国が日本製品に15%の追加関税を発動 「合意」との齟齬に懸念広がる …
  4. 石破政権に「ネット言論統制」疑惑 削除要請の根拠示さず批判拡大 参院選を終えたばかりの自民党…
  5. CIA資金提供疑惑と河野洋平氏の非公開要請 戦後最大級の「政治とカネ」問題が再燃 冷戦期、米…
  6. 政治と税制の透明性に関する新たな提起:マイナンバー・インボイスと政治献金の「紐づけ」へ 制度…
  7. トランプ氏、対日15%関税に署名 カナダには35% 7日後に発動へ 米国のトランプ大統領は7…
  8. 外国人ドライバーの事故が増加傾向 免許取得のハードルの低さが安全脅かす 日本で車を運転する外…
  9. 【ベトナム技能実習生の逃亡が最多に】制度のほころびが生む不法滞在と犯罪の連鎖 佐賀県伊万里市…
  10. 野党8党が団結、ガソリン暫定税率の11月廃止へ法案提出へ ガソリン価格の高止まりが続く中、立…
ページ上部へ戻る