2025年2月14日、政府は緊急時に重要物資の安定供給を確保するため、国が企業の工場を一時的に取得できることを盛り込んだ政令改正を閣議決定しました。この改正は、感染症の流行や海外の輸出禁止措置などで原材料供給が途絶する事態を想定し、半導体や蓄電池、抗菌性物質製剤など12項目を対象としています。施行日は2月19日です。
正式な政令名
今回の改正は、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令」の改正です。この法律は、国民の生存に必要不可欠な、または広く国民生活・経済活動が依拠している重要な物資の安定供給確保を目的としています。具体的には、特定重要物資として指定された物資のサプライチェーン強靱化を図るため、民間事業者等を支援する制度を定めています。
対象となる重要物資
今回の改正で対象となる12項目は以下の通りです。
- 半導体
- 蓄電池
- 抗菌性物質製剤
- 肥料
- 永久磁石
- 工作機械・産業用ロボット
- 航空機の部品
- クラウドプログラム
- 天然ガス
- 重要鉱物
- 船舶の部品
- 先端電子部品(コンデンサー及びろ波器)
これらの物資は、国民生活や経済活動にとって不可欠であり、その供給が途絶すると深刻な影響を及ぼす可能性があります。
工場取得の目的と手続き
政府は、感染症の流行や海外の輸出禁止措置などで原材料供給が途絶する事態を想定し、民間企業の工場を一時的に取得することで、重要物資の安定供給を確保する方針です。工場取得後、民間に物資生産を委託することで、迅速な供給体制の構築を目指します。また、他国が工場を買収し、重要技術が流出するのを防ぐ狙いもあります。
具体的な手続きとしては、まず物資所管大臣が「安定供給確保を図るための取組方針」を策定・公表します。その後、企業は供給確保計画を作成し、物資所管大臣に提出して認定を受けます。認定を受けた場合、取組の実施に当たって必要な資金について、安定供給確保支援法人や指定金融機関による助成や融資等の支援を受けることができます。
懸念される点
今回の政令改正に対して、以下のような懸念が指摘されています。
- 民間企業の自主性への影響: 国が企業の工場を一時的に取得することで、企業の自主的な経営判断が制約される可能性があります。特に、技術流出や機密情報の管理に関する懸念が高まっています。
- 適用範囲の明確化: 現時点で具体的な適用対象がないとされていますが、今後の適用範囲や基準が不明確なため、企業側の不安が残ります。特に、どのような状況下で工場取得が行われるのか、具体的な条件や手続きが明示されていない点が懸念されています。
- 補助金等の効果: 城内実経済安全保障担当相は「補助金などでは安定供給確保が困難なケースを想定している」と述べていますが、実際にどのような支援策が講じられるのか、具体的な内容が不明確なため、企業側の不安が残ります。
これらの懸念に対して、政府は今後、適用基準や手続きの明確化、企業との十分な協議を行い、円滑な実施を目指すとしています。また、企業側も政府の方針や支援策を注視し、適切な対応を検討する必要があります。
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