中国の新行政区設置とチベットダム計画、インドとの対立再燃で緊張高まる

中国とインドは長年にわたり国境問題で対立しており、昨年10月に5年ぶりとなる首脳会談が開催され、緊張緩和に向けた動きが見られました。しかし、最近の中国の行動が再び両国の関係に影を落としています。

中国の新たな行政区設置

2024年12月下旬、中国は新疆ウイグル自治区ホータン地区に新たな2つの県を設置したと発表しました。インド外務省はこれに対し、インドの連邦直轄地ラダックの一部が中国の新県の管轄下に含まれることを指摘し、「インド領を中国が不法占拠することは決して受け入れられない」と強く反発しました。インドは直ちに中国に抗議の意を表明しました。

チベットでの巨大ダム建設計画

さらに、中国はチベット自治区のヤルンツァンポ川に世界最大級の水力発電ダムを建設する計画を承認しました。このダムは、三峡ダムの3倍の発電能力を持つとされ、投資額は約1兆元(約22兆円)に上ると報じられています。ヤルンツァンポ川はインドのアルナーチャル・プラデーシュ州を通過し、最終的にはバングラデシュに流れ込むため、下流のインドやバングラデシュは水供給への影響を懸念しています。インド政府は「川を武器化している」と批判し、両国の対立が再燃する可能性を指摘しています。

インドの懸念と反発

インドは、中国のこれらの行動が国際法や既存の合意に反すると主張し、強い懸念を表明しています。特に、ダム建設計画については、下流の水供給に大きな影響を与える可能性があるとして、情報提供と協議を求めています。また、インドは中国が国境地帯での軍事的プレゼンスを強化しているとの報告もあり、これらの動きが両国間の信頼関係を損なう恐れがあると警戒しています。

国際社会の反応

国際社会からも懸念の声が上がっています。特に、チベットの人権団体や環境保護団体は、ダム建設が地域の生態系や住民の生活に与える影響を懸念しています。また、インドとバングラデシュの下流国は、水資源の管理と情報共有の重要性を強調し、中国に対して透明性と協力を求めています。

中国の新たな行政区設置とチベットでの巨大ダム建設計画は、インドとの間で新たな緊張を引き起こしています。インドはこれらの行動に強く反発し、国際社会も懸念を示しています。今後、両国がどのように対話と協力を進め、地域の安定と平和を維持していくかが注目されます。

関連記事

おすすめ記事

  1. 北海道釧路市では、太陽光発電所の建設が急速に進んでおり、再生可能エネルギーの普及と自然環境の保護を…
  2. 「簡単に取れる」日本のビザ、中国人からの相談殺到 狙われる制度の隙 「報酬さえ払えば、ビザは…
  3. 行き過ぎた多様性の問題点 多様性(ダイバーシティ)の推進は、現代社会において重要な課題として…
  4. 軽油価格カルテル疑惑:石油販売6社の不正行為が物流業界に与えた深刻な影響 2025年5月27…
  5. 2025年以降に予定されている増税・負担増のリストを作りました。 以下は画像を基に作成した「…

新着記事

  1. 法の軽視は正義ではない グレタ・トゥンベリ氏「8回拘束」に広がる疑問の声 スウェーデンの環境…
  2. 中国戦闘機が自衛隊哨戒機に危険な接近 45メートルの至近距離に防衛省が強く抗議 中国空母「山…
  3. 台湾の海洋調査船「新海研二號」が、日本の排他的経済水域(EEZ)とみられる与那国島沖で、無断で調査…
  4. 届け出なしで堂々営業 無許可民泊の“グレーゾーン” 民泊は観光地不足の救世主として歓迎される…
  5. 新型ウイルス「HKU5-CoV-2」が中国で発見 致死率最大35%のMERS系、ヒト感染リスクに警戒
    新型コロナウイルス「HKU5-CoV-2」発見:中国で確認された“次のパンデミック候補”に警戒 …
  6. 中国空母「遼寧」が南鳥島沖に初進出 日本周辺海域で艦載機訓練、防衛省が警戒強化
    中国空母「遼寧」が南鳥島沖に初進出 太平洋への軍事的圧力を強化 南鳥島近海に空母進出、日本の…
  7. 中国系開発による森林法違反疑い 羊蹄山麓で無許可伐採、北海道が工事停止を勧告 北海道の自然の…
  8. 尖閣諸島
    中国海警船、またも尖閣諸島周辺に領海侵入 主権侵害は常態化へ 日本政府は厳格対応を 沖縄県・…
  9. フィンランドが永住権取得要件を厳格化 移民統合を優先し“選別”の時代へ フィンランド政府は6…
  10. 政党収入の6割超が政党交付金に依存:2023年政治資金収支報告書が示す税金依存の実態 202…
ページ上部へ戻る