
日本、電磁砲「レールガン」実験へ――極超音速兵器迎撃の切り札か
防衛省は、最新鋭の兵器である「レールガン(電磁砲)」の実用化に向け、近く洋上での発射実験を実施する方針を固めた。火薬ではなく電気エネルギーを用いて弾丸を超高速で発射するこの技術は、中国や北朝鮮が開発を進める「極超音速兵器」の迎撃に有効とされている。
レールガンとは?――火薬不要の次世代兵器
レールガンは、砲身内の2本の導電レールに強力な電流を流し、その電磁力で金属弾を加速・発射する仕組みを持つ。火薬を使わないため、従来の火砲と比べて以下のような利点がある。
- 高速発射:弾丸が音速を超える速度で発射可能(マッハ5以上も可能)
- 射程の向上:通常の火砲よりも長い射程を実現
- 弾薬の保管が容易:火薬を使用しないため、安全性が高い
こうした特性により、レールガンは艦艇、航空機、ドローンへの攻撃だけでなく、極超音速ミサイルの迎撃にも活用できると期待されている。
洋上での実験――試験艦「あすか」を使用
今回の実験は、海上自衛隊の試験艦「あすか」に全長約6メートル、重量約8トンのレールガン試作品を搭載し、洋上で行われる予定だ。従来の小型試作品を使った実験から一歩進み、実戦を想定したサイズでの試験に挑む。
- 実験内容:目標物への命中精度、弾道の安定性、発射の安定性などを検証
- 実施場所:洋上(具体的な場所は非公表)
- 実施目的:実戦配備に向けた性能評価と課題の特定
極超音速兵器への対応――「ゲームチェンジャー」の期待
中国や北朝鮮は、音速の5倍以上で飛行し、従来のミサイル防衛システムでは迎撃が困難な「極超音速兵器」の開発を進めている。レールガンは、このような高速・高機動の兵器に対抗しうる手段として注目されている。
- 中国の動向:2023年、中国海軍工科大学はレールガンで120発の連続発射に成功したと報告。
- アメリカの動向:米海軍は一時レールガン開発を進めていたが、2021年に開発を中止し、極超音速兵器に資源を集中。
日本もこうした国際的な技術競争に参加し、2024年にはドイツ、フランス両国と共同研究の署名を交わし、技術開発を加速させている。
実用化への課題――レール摩耗と発射速度低下
レールガンの実用化には技術的な課題も残されている。特に次の2つが主要な問題だ。
- レールの摩耗:弾丸との接触でレールが損傷し、寿命が短くなる
- 連続発射時の性能劣化:発射速度が低下し、連続使用が困難になる
防衛省は、こうした課題を克服するために研究開発を続けており、米国の実験データも活用して技術向上を図る。
「イージス・システム搭載艦」に配備へ
防衛省は、将来的にレールガンを「イージス・システム搭載艦」や新型護衛艦に配備する構想を描いている。これは、日本の防衛力を大きく向上させ、特に極超音速兵器への防衛能力を強化することを目指している。
- 配備予定艦:イージス・システム搭載艦、新型護衛艦
- 期待効果:極超音速兵器への迅速な迎撃、敵艦や航空機への長距離攻撃
今後も洋上実験を重ねながら、実用化に向けた技術開発は続く。日本がこの「ゲームチェンジャー」を実用化できるかどうか、国内外から注目が集まっている。