
南海トラフ巨大地震の被害想定に反応 在日中国大使館が防災対策を促す
南海トラフ巨大地震による甚大な被害が想定される中、在日中国大使館が在留中国人や日本渡航予定者に向けて防災意識を高めるよう呼びかけている。
注目されたのは、その中で「不動産購入は慎重に」と勧告している点だ。
発表は4月14日、大使館の公式サイトに中国語のみで掲載された。日本政府の中央防災会議が3月末に示した新たな被害想定では、南海トラフ沿いで発生する巨大地震によって、最悪で約29万8000人が犠牲になるとされる。
在日中国大使館は、こうした想定を紹介した上で、防災用品の備蓄や避難所情報の事前確認、災害発生時の迅速な避難行動を促している。
そして、一般的な防災行動に加え、異例ともいえる形で「日本での不動産購入は慎重に選択するように」と明記された。
これまで積極的に進められてきた中国人による日本の不動産投資に、慎重姿勢を求めた発信は、大使館からは異例といえる。
中国人による不動産取得が拡大する中での注意喚起
中国人による日本国内の不動産取得は、この数年で目に見えて増えてきた。
北海道のリゾート地や沖縄の観光地、さらには都市部のタワーマンションまで、さまざまな分野で中国資本の存在感が強まっている。
観光需要や円安を追い風に、別荘購入や投資目的の不動産取得が進んだが、日本国内では次第に安全保障上の懸念も指摘されるようになった。
2021年には自衛隊基地や国境離島周辺の土地取引を対象とした「重要土地等調査法」が成立。しかし、施行後も民間取引の監視は容易ではなく、規制の網をかいくぐる形で土地が取得されるケースも後を絶たない。
今回、大使館側から「不動産取得は慎重に」と呼びかけた背景には、こうした国際情勢の変化や、日本国内における土地取得問題への警戒感が反映されている可能性もある。
「7月大地震説」拡散、訪日市場にも影響
香港や中国本土では、風水師の発言や日本の漫画作品に端を発した「7月に日本で大地震が起こる」という噂がSNSを中心に急速に広がっている。
この予言めいた情報により、日本行きを控える動きも出始めており、香港のグレーターベイ航空は仙台・徳島線での減便を発表した。
科学的根拠に乏しい噂ではあるが、「災害リスクへの過剰な反応」は訪日観光市場に影響を与えかねない。
今回の在日中国大使館の防災呼びかけも、こうした憶測をさらに後押しする可能性があり、観光業界では警戒感が広がっている。
日本政府は、南海トラフ地震への備えとして、避難計画の見直しやインフラ強化を進めているが、外国人観光客や在留外国人への防災情報の提供が十分かどうかは課題として残っている。
今後の焦点:日中間の土地取引問題に影響も
中国政府側が自国民に対して日本での不動産購入に慎重さを求めたことで、今後の日中間における土地取引問題にも波紋が広がりそうだ。
日本国内では、外国資本による不動産取得を制限すべきだとする声が近年高まっている。
特に、重要インフラ施設周辺や、国防上重要とされる地域での外国資本による土地取得には、今後さらに厳格な規制が検討される可能性が高い。
一方で、日本経済にとって外国資本による投資は重要な役割を果たしてきた側面もあり、過度な規制には慎重論も根強い。
防災意識と安全保障意識をどう両立させていくか、日本にとっても大きな課題となりそうだ。
- 南海トラフ地震の新たな被害想定を受け、在日中国大使館が防災意識向上を呼びかけた。
- 異例の「日本での不動産購入は慎重に」との注意喚起が行われた。
- 中国人による不動産取得増加に対し、日本国内では安全保障上の懸念が強まっている。
- 香港などでは「7月大地震説」が拡散し、訪日市場にも影響が出始めている。
- 今後、外国資本による土地取得規制の議論が一層活発化する可能性がある。
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