
【米中貿易戦争が再燃】米の最大245%関税に中国は「無視」と一蹴 報復措置とWTO提訴も
世界経済を揺るがす米中の通商摩擦が、再び激しい火花を散らしている。アメリカ政府が中国製品に対して最大245%の高関税を科すと発表したのに対し、中国は「関税の数字遊びには付き合わない」と正面から否定し、報復関税と世界貿易機関(WTO)への提訴で対抗する構えを見せている。背景には、両国の思惑と国際秩序をめぐる深い対立がある。
【ホワイトハウスが強硬策】最大245%の高関税を通告
トランプ政権は4月中旬、中国製品に対する関税の大幅引き上げを発表した。発端は、4月16日に公表されたファクトシートである。これによると、最新の相互関税(125%)に加え、フェンタニル(合成麻薬)の危機対策として20%、さらに「不公正な貿易慣行」に対する7.5〜100%の追加関税を科すことで、合計最大245%に達するという。
トランプ大統領は2週間前に「すべての国に対して相互関税を強化する」と打ち上げていたが、その後、中国以外の諸外国に対しては強硬姿勢を緩めた。一方で中国に対しては方針を変えず、「特別扱い」での厳格対応を継続している。
【中国は応じず】「無視する」と反発、WTOにも提訴
この通告に対して、中国政府の反応は素早かった。外務省報道官は「我々はこの種の『数字遊び』には付き合わない」と一蹴し、米国の高圧的な貿易政策には乗らない姿勢を鮮明にした。
さらに中国は、アメリカによる一方的な関税引き上げがWTOのルールに明らかに反していると主張。すでにジュネーブのWTOに正式に提訴し、国際的な場で米国の行為を問いただす構えだ。中国商務部の声明では、「米国の措置は多国間貿易体制への重大な挑戦であり、世界の信頼を損ねるものだ」と強く批判している。
【報復の構え】米国製品に最大125%の関税で対抗
中国は報復措置として、アメリカから輸入する農産物や工業製品などに対し、関税を最大125%に引き上げると発表した。対象には大豆、豚肉、医薬品、航空部品など、アメリカ経済に直撃する主要輸出品が含まれる。
さらに、レアアース(金属資源)の輸出規制や、特定農産物の輸入停止など、「武器」は複数用意されているとみられる。これらの動きは、米中貿易摩擦が単なる関税合戦にとどまらず、国家戦略を賭けた経済戦争の様相を呈していることを物語っている。
【貿易交渉の再開は遠く】北京「対話には平等と尊重が不可欠」
米国側は、貿易交渉再開の意思をにじませつつ、「まずは中国が歩み寄るべき」と主張。トランプ氏は「中国には我々の市場が必要だ」と語り、米国が優位に立っていると強調する。
一方の中国は、交渉の前提として「相互尊重と平等」を掲げ、米国のような一方的な圧力には応じないと明言。今週には新たな貿易交渉官・李成剛氏を任命し、「強硬かつ戦略的な対応を取るための人事」として注目されている。
【世界経済への影響】サプライチェーンに打撃、企業も悲鳴
今回の対立激化は、世界の製造業と貿易にとっても大きなリスクだ。多くの国際企業が中国とアメリカの双方に生産・供給網を抱えており、関税の応酬はコスト増、物流混乱、そして最終消費者への価格転嫁へとつながっていく。
経済学者の間では、「このまま事態が長引けば、グローバル経済全体が減速する」との懸念が広がっている。特に影響が深刻なのは、輸出に依存するアジア諸国や、半導体・電気自動車など米中双方と取引のあるハイテク企業だ。
【国際社会の反応】各国は「様子見」も、二国間協議に傾く動きも
米中の強硬姿勢を受けて、他の国々は慎重な姿勢を保ちつつも、「巻き込まれない」対応を模索している。ヨーロッパや東南アジア諸国の一部では、米国と中国のいずれかと個別に交渉する「二国間取引」へのシフトも見られる。
特にフェンタニル対策やEVバッテリーをめぐる競争で米中が国際規範を無視するような動きを取れば、同盟国からの信頼も揺らぎかねない。
【終わりの見えない争い】対話と妥協はどこへ
米中貿易戦争は一度収束したかに見えたが、2025年のいま再び激化の一途をたどっている。互いに「譲歩しない」姿勢を貫いており、当面の間、関係修復の糸口は見えそうにない。
いま国際社会が必要としているのは、エゴと力の誇示ではなく、冷静な外交と多国間の調整機能だ。果たして米中は歩み寄ることができるのか、それとも世界経済はさらに大きな代償を支払うことになるのか——注視が続く。
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