
オーストラリア政府は4月1日、中国の科学調査船「探索1号」が同国南部近海を航行していることを確認しました。この調査船は、海底の地形や通信ケーブルの情報を収集している可能性が指摘されています。中国海軍の艦艇が2月にオーストラリア東部沖で実弾射撃演習を行ったことに続く活動であり、オーストラリアの軍や海洋当局は警戒を強めています。
調査船の航行経路と活動内容
「探索1号」は、ニュージーランドで共同調査に参加した後、西へ向かい、オーストラリア南東部のビクトリア州とタスマニア島の間に位置するバス海峡を通過しました。その後、オーストラリア南部沖を南西方向に進み、パース方面へ向かっています。この航路選択は、オーストラリア東部沖を北上するよりも効率的ではないものの、南回りを選んだことから、オーストラリア側で懸念が広がっています。また、同船は深海を探索可能な有人潜水艇も搭載しているとされています。
過去の類似事例とオーストラリア政府の対応
オーストラリアでは、過去にも中国のスパイ船が西岸沖で「挑発的」な航行を行ったとの報告があります。2022年5月には、中国海軍の監視船がオーストラリア西部沿岸近くを航行し、国防相が「挑発行為」と非難する事態がありました。さらに、2024年1月には、中国軍艦がオーストラリア海軍艦艇の音波探知機(ソナー)を作動させ、潜水作業中の隊員が負傷する事件が発生しました。オーストラリアのアルバニージー首相は、中国大使の否定的な発言に反論し、ソナー作動は中国軍艦によるものであり、危険な行動だったと指摘しました。
中国によるオーストラリア人記者の拘束と解放
また、2023年10月には、中国で3年以上にわたり機密情報を外国に提供した疑いで拘束されていたオーストラリア人記者、チェン・レイ氏が解放され、帰国するという出来事もありました。この事件は、豪中関係の緊張を象徴するものであり、両国間の外交的な摩擦を浮き彫りにしました。
オーストラリア政府の対応と今後の展望
これらの一連の出来事を受け、オーストラリア政府は中国の活動に対して警戒を強めています。特に、科学調査船の航行や軍事演習に関しては、国家安全保障上の懸念が高まっており、情報収集や監視体制の強化が求められています。今後も両国間の緊張が続く中、オーストラリアは国際社会と連携しつつ、自国の安全保障を確保するための方策を講じていく必要があります。