
中国海警船の異常接近、尖閣諸島周辺で緊張高まる
沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺海域で、2025年3月24日、中国海警局の船舶が一時8隻態勢を敷き、領海侵入が過去最長となったことが、3月25日の海上保安庁関係者への取材や産経新聞のデータ分析で明らかになった。これらの船舶は、交代要員ではなく、新たな船団として出現し、接続水域に入らなかったため、海保は公表していなかった。専門家は、この動きを「サラミ戦術」の一環と指摘し、今後の動向に警戒を呼びかけている。
異例の8隻態勢
海上保安庁関係者や船舶自動識別装置(AIS)のデータによれば、3月24日、接続水域から約4キロ離れた海域で、中国船4隻が航行していた。そのうち2隻は76ミリ機関砲を搭載した「武装船」であり、通常、海警船は4隻で船団を組み、約1カ月ごとに交代する。しかし、今回の4隻は、領海に侵入した4隻と交代することなく、3月24日夜から25日朝にかけて尖閣を離れた。海保関係者は「意図は不明だ」としている。
中国側の主張と国際的反応
一方、中国海警局の劉徳軍報道官は3月24日、尖閣諸島周辺で操業していた日本の漁船4隻を追い払ったと主張した。劉氏は、「(日本の漁船は)中国領海に不法に侵入した。中国海警局の船舶は法に基づき必要な取り締まり措置を取り、警告して追い払った」と述べた。また、尖閣諸島について「中国固有の領土であり、日本に対し、同海域における違法行為を直ちに停止するよう求める」と強調した。
これに対し、日本政府は中国の主張を強く反発し、尖閣諸島は日本固有の領土であると主張している。国際社会でも、中国の海警船による領海侵入や日本漁船への対応に対し、懸念の声が上がっている。
専門家の見解と今後の展望
元海上保安庁長官の奥島高弘氏は、中国海警船の活動について、「彼らは領海内で操業している日本漁船を排除しようと侵入してくるが、海保の巡視船がしっかりとガードしているため、接近もできないけれど出ていくわけにもない状態になっている」と分析している。また、専門家は、今回の8隻態勢について、「サラミ戦術」の一環と指摘し、小さな動きを積み重ねて圧力を強める戦術であり、今後も同様の動きが続く可能性があると警戒している。
尖閣諸島周辺での中国海警船の異常接近は、地域の安全保障上、重大な懸念材料である。日本政府や海上保安庁は、引き続き警戒監視を強化するとともに、国際社会との連携を深め、適切な対応を講じる必要がある。