日本原子力研究開発機構(JAEA)、ウランを利用した新型充電式電池を開発

日本原子力研究開発機構(JAEA)、ウランを利用した充電式電池を開発

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、ウランを利用した充電式電池の開発に成功したと発表しました。この技術は、核燃料の製造過程で生じる「劣化ウラン」を新たな資源として活用できる可能性を秘めており、再生可能エネルギーの効率的な利用にもつながると期待されています。

ウランを使った電池の開発経緯

ウランは、その特殊な化学的性質から、電池の材料としての可能性が注目されてきました。ウランの酸化数が3価から6価まで変化するため、充放電を繰り返す電池の活性材料として使えるのではないかと考えられていたのです。しかし、実際にウランを使って電池を作り、性能を確認した研究はこれまでほとんどありませんでした。

JAEAの研究チームは、この難題に挑戦し、ウランを活性材料に使った充電式電池の開発に成功しました。電池の充放電性能も確認され、実用化に向けて前進しています。

開発された電池の特徴

JAEAが開発したウラン電池では、負極にウラン、正極に鉄を使用しています。試作した単セルの電圧は1.3ボルトで、一般的なアルカリ乾電池(1.5ボルト)に近い性能を持っています。また、充放電を10回繰り返しても、性能にほとんど変化が見られず、非常に安定したサイクル特性が確認されました。

劣化ウランの新たな利用方法

ウランは原発の燃料として使用されることが多いですが、その大半は「劣化ウラン」と呼ばれる、ウラン235がほとんど含まれていないウランになります。この劣化ウランは、現在の原子炉では燃料として使用できず、大量に貯蔵されているのが現状です。しかし、JAEAの新しい技術は、この劣化ウランを新たな資源として活用できる可能性を示唆しています。

これにより、再生可能エネルギーの電力供給網の出力調整にも利用できるようになり、脱炭素社会の実現に向けた重要な一歩となることが期待されています。

今後の展望とさらなる挑戦

JAEAは、ウラン電池のさらに大容量化を目指して、別の技術である「レドックスフロー電池」の開発にも取り組んでいます。この技術を使えば、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの変動に対応するための電力を安定的に供給できるようになるとされています。

また、大規模な電池システムとして、1時間あたり30,000キロワットの電力を供給できる「ウランレドックスフロー蓄電池」の開発も進められており、これによって3,000世帯分の1日分の電力供給が可能になるとされています。


JAEAが開発したウランを利用した充電式電池は、劣化ウランを有効に活用することで、再生可能エネルギーの効率的な利用を促進するだけでなく、脱炭素社会の実現にも貢献できる可能性があります。今後の研究と実用化が進めば、エネルギー分野における新たな選択肢として注目されることでしょう。

世界初! ウランを用いた蓄電池を開発
―劣化ウランの資源化で再生可能エネルギーとの相乗効果を最大限に発揮―

関連記事

おすすめ記事

  1. 再エネ賦課金、過去最高の月1600円超 2032年まで増加見通し
    再エネ賦課金、過去最高へ 月1600円超の上乗せ負担に「国民の限界超えた」と専門家が警鐘 太…
  2. 中国海警局の船、尖閣周辺で再び領海侵入 日本漁船に接近 2025年5月7日、沖縄県石垣市の尖…
  3. 中国が東シナ海で資源開発を既成事実化 日本政府は“抗議止まり”の弱腰外交に終始 日本と中国が…
  4. 中国旗と宮崎の水源
    外国資本が宮崎の森林717haを取得 中国語話す代表に住民や議会から不安の声 宮崎県都城…
  5. 中国人移住に「民泊」という選択肢 大阪で急増、SNSが背中押す 「民泊経営で日本に移住できる…

新着記事

  1. 副首都構想のいま—維新は何を実現したいのか 日本維新の会が掲げる「副首都構想」は、東京一極集…
  2. 台湾・国史館の機密解除 「便衣」潜入と“相互不侵”を示す電報群 台湾の国史館(國史館)と台湾…
  3. [ays_poll id=8] …
  4. 参院選で示された「減税」への圧倒的な民意 7月20日に投開票が行われた参院選では、ガソリンの…
  5. 日本のODAは10年で36兆円超に増加
    日本のODA支出は10年で36兆円規模へ 日本政府が海外に対して行ってきた政府開発援助(OD…
  6. 中国大使館が呼びかける「中国人襲撃への警戒」 在日中国大使館が8月18日に発表した注意喚起が…
  7. 重要な土地を外国資本に奪われるリスク 政府の動きの遅さが招く“静かなる有事” 政府が初…
  8. 米ペンシルベニア州USスチール工場で爆発 死者2人・負傷10人 日本製鉄傘下で発生 米国東部…
  9. 日本移住で大学まで学費無料?中国で密かに広がる“教育支援”悪用の動き 厚生労働省の統計によれ…
  10. 日米関係に新たな火種か 米国が日本製品に15%の追加関税を発動 「合意」との齟齬に懸念広がる …
ページ上部へ戻る