
ネコの「宿命の病」ともいわれる腎臓病。その新たな治療法がついに登場することが決まりました。一般社団法人「AIM医学研究所」(IAM)の宮﨑徹所長(62)は、このたび、腎臓病に悩むネコのための新薬を開発したことを発表しました。来月には臨床試験を開始し、順調に進めば来春には実用化される予定です。宮﨑所長は「愛猫家の方々の支援に恩返しするためにも、できるだけ早く、かつ安価で薬を提供したい」と語っています。
腎臓病に悩むネコたち
ネコは5歳を過ぎるころから、腎臓に異常をきたすことが多く、特に高齢のネコにとって腎臓病は致命的な病気となります。腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物がうまく排出されず、全身の健康に大きな影響を与えるため、早期発見と治療が不可欠です。しかし、これまでの治療法は限られており、多くの愛猫家がその難しさに悩まされてきました。
AIMタンパク質の発見とその可能性
この新薬の開発に至る背景には、免疫学者である宮﨑徹所長の長年の研究があります。1999年、スイス・バーゼル免疫学研究所で主任研究員として勤務していた宮﨑所長は、体内で老廃物を掃除する重要な役割を果たすタンパク質「AIM(アポトーシス抑制マクロファージ)」を発見しました。さらに、東京大学での研究を通じて、ネコがAIMを先天的に十分に機能させることができないため、腎臓内に老廃物が蓄積して腎臓病を引き起こすことが分かりました。この発見は、ネコの腎臓病治療に新たな道を開くもので、飼い主たちから大きな注目を浴びました。
愛猫家たちからの支援と薬開発の加速
宮﨑所長の研究は瞬く間に愛猫家たちに広まり、わずか半年で3億円もの寄付金が集まりました。この熱い支援を受けて、宮﨑所長は薬の開発を加速させるため、2022年に東京大学を辞職し、IAMを設立しました。また、製薬ベンチャー「IAM CAT」を立ち上げ、治験に必要な資金調達も行いました。新薬の製造は台湾で行われ、凍結乾燥したAIMをネコに投与する方式が採用されています。
近く始まる臨床試験と実用化への道
新薬は、来月にも臨床試験が始まる予定で、年内にはその結果がまとめられます。その後、薬剤の安定性試験などを経て、来春には農林水産省に承認申請を行う予定です。順調に進めば、早ければ2027年春ごろに実用化される見込みです。宮﨑所長は「この薬が高額な治療法に頼らず、誰でも手に入れられるようにしたい」と強調しており、薬の価格もできる限り抑えた形で提供する考えです。
ヒト用薬の開発も視野に
AIMはヒトの腎臓疾患にも関与している可能性があることが分かっており、宮﨑所長はヒト用の薬の開発にも取り組んでいます。「AIMの発見から四半世紀が経ちましたが、この研究が治せない病気を治療するために活用される日を夢見ています」と語る宮﨑所長。新薬の開発はネコだけでなく、将来的にはヒトの健康にも大きな貢献を果たす可能性があります。
新薬に期待がかかる
腎臓病に悩むネコたちに新たな希望をもたらすこの治療薬は、多くの愛猫家たちにとって待望のものであり、今後の臨床試験の進展が注目されています。早期の実用化に向けた努力が実を結ぶことを、ネコを愛するすべての人々が期待しています。