積水化学「SOLAFIL」販売開始 ペロブスカイト太陽電池は鉛を使うのか?封じ込め・回収と発電効率を徹底解説
- 2026/3/30
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- ペロブスカイト太陽電池, 再生可能エネルギー

【国内メーカーが販売へ】積水「SOLAFIL」始動、軽量フィルムが“屋根制約”をほどく
積水化学工業のグループ会社、積水ソーラーフィルム(SSF)がフィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL(ソラフィル)」の事業開始を発表し、顧客への供給に向けた協議を始めた。まずは金属屋根向けで、環境省の導入支援事業に採択された自治体・事業者(さいたま市、滋賀県、西日本高速道路、福岡県、福岡市)や、東京都の先行導入事業に向けて提供するという。
ペロブスカイトは「薄い」「軽い」「曲がる」という性格が強い。SSFの資料では、発電効率15.0%の達成、屋外耐久性10年相当の確認、曲げ半径15cm程度の柔軟性などが示されている。従来の太陽光パネルが苦手だった体育館や工場など“耐荷重が厳しい屋根”が、普及の主戦場になる。
【鉛は使うのか】結論「使う」。課題は“封じ込め”と“回収の制度設計”
結論から言う。現時点で主流のペロブスカイト太陽電池は鉛(Pb)を含む設計が一般的で、積水の説明資料でもペロブスカイト結晶の構成要素として「B=Lead(Pb2+)」が明記されている。
では、危ないのか。論点は2つに割れる。
1つ目は使用中の封じ込めだ。SSFの工程説明では「バリア工程」や、バリアフィルムを貼り合わせるモジュール工程が示されている。要するに“発電層をフィルムで挟み込み、外気(水分・酸素)から守る”設計思想で、これは耐久性のためであると同時に、含有物質を外へ出さないための基本動作でもある。
2つ目が廃棄時の回収だ。積水はIRの質疑で「ヨウ素とともに鉛が含まれるのは課題」と認めた上で、環境影響評価を進め、まずは“自社が責任を持って回収できる公共分野から”始める考えを示している。さらに「当社が最後まで処理するスタンス」とも述べた。
国側も、ペロブスカイトには「0.5g/㎡程度の鉛」を含み得るとして、適正な処理・回収が必要だと整理する。
【発電効率はどうか】“数字の見栄え”より「設置できる場所」で勝負が決まる
SOLAFILの発電効率は15%が示されている。一方、既存の主力である結晶シリコンは、工業生産のモジュールで実効20〜22%程度という説明がある。
効率だけ見れば、現時点のペロブスカイトは見劣りする。寿命でも、結晶シリコンは25年以上を前提に設計されるという整理が一般的だ。だからこそ、ペロブスカイトが勝負すべき場所は明確になる。「シリコンを置けなかった場所」だ。屋根の耐荷重、曲面、仮設性、撤去・交換のしやすさ——ここに価値が出る。
積水は将来目標として、効率20%、耐久20年(いわゆる“ダブル20”)を視野に入れている。効率競争は続くが、普及の初速を決めるのは、むしろ施工・運用・回収まで含めた「総コストと安心設計」だ。
主要スペック比較(現時点の整理)
| 項目 | 積水 SOLAFIL(フィルム型ペロブスカイト) | 既存:結晶シリコン(一般的な工業生産モジュール) |
|---|---|---|
| 変換効率 | 15.0%達成 | 20〜22%程度 |
| 屋外耐久 | 10年相当を確認 | 25年以上設計(一般論) |
| 形状 | 薄い・軽い・曲がる(曲げ半径15cm程度) | 基本は硬質パネル |
| 含有物質(論点) | 鉛を含む設計(回収・処理が争点) | 有害物質情報登録等の枠組みあり |
【量産は堺から】シャープ工場活用、2030年に1GW級へ
供給量が立ち上がらない限り、価格は下がらない。積水はシャープ堺工場の建屋・設備を活用し、2027年の稼働を想定する100MW生産ラインを整備し、2030年に向けて1GW級へ拡大する方針を示している。
背景には国策がある。経産省の「次世代型太陽電池戦略」は、2040年に約20GWの導入を目指すと明記し、需要創出や施工ガイドライン、廃棄・リサイクルの制度整備を含めて後押しする考えを示す。SOLAFILが公共施設やインフラ(高速道路など)から入っていく設計は、まさにこの政策設計と噛み合う。
【競争は激しい】パナソニック、京大発エネコートも“窓・建材”へ
市場は積水だけではない。パナソニックHDはガラス型ペロブスカイトの長期実証を開始し、建材としての実装(窓への取り付け方法や配線など)を検証すると発表している。また、報道では2026年に建材一体型のテストマーケティングを計画しているとも伝えられてきた。
京都大学発のエネコートテクノロジーズも、NEDO資料で2027年度に量産ライン構築を想定する投資計画を示している。
つまり日本勢は「屋根」「壁」「窓」「インフラ」と用途を分けながら、同時多発で社会実装に突入している。
結局、勝敗を決めるのは3点だ。第一に、耐久性を“年数”として説明できる評価基準。第二に、鉛を含む設計の回収・リサイクルを、法と実務で回せる形にすること。第三に、設置と撤去を含めたトータルコスト。SOLAFILの商用供給開始は、その試金石になる。




















