米ペンシルベニア州USスチール工場で爆発 死者2人・負傷10人 日本製鉄傘下で発生した重大事故

米ペンシルベニア州USスチール工場で爆発 死者2人・負傷10人 日本製鉄傘下で発生

米国東部ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊のクレアトン市にある鉄鋼大手USスチールの工場で11日午前、複数の爆発が起き、作業員2人が死亡、10人がけがをしました。現場はコークスを製造する「クレアトン・コーク・ワークス」で、全米最大級の生産能力を持ち、約1,300人が勤務しています。

地元消防によると、爆発は午前10時50分ごろ発生。炎と黒煙が立ち上り、近隣からも複数回の爆発音が確認されました。救助隊はがれきの下から作業員を救出し、負傷者のうち5人は治療後に退院、残る5人は重傷ながらも命に別条はないとされています。

事故を受け、ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事はX(旧Twitter)で「複数の爆発があった。地元当局と連携し、必要な支援を行う」と投稿。周辺住民には一時、自宅待機と窓の閉鎖が呼びかけられましたが、空気中の有害物質は基準値を超えず、その後解除されました。

USスチールのCEOデービッド・バリット氏は声明で「従業員と地域住民の安全を最優先に、原因究明と再発防止に全力を尽くす」と述べています。原因は現時点で不明で、米化学安全委員会(CSB)が現地調査に着手しました。

クレアトン工場は1916年に操業を開始し、年間数百万トンのコークスを生産。鉄鋼産業の要として地域経済を支えてきましたが、過去にも爆発や火災、環境基準違反による罰金・訴訟など、安全管理上の問題が繰り返されてきました。2018年の火災では大気汚染防止装置が損傷し、周辺住民の健康被害が懸念された経緯もあります。

今回の爆発は、日本製鉄によるUSスチール買収からわずか2カ月後に発生しました。日本製鉄は約1.5兆円を投じて6月に完全子会社化したばかりで、今後はグローバル基準での安全対策や設備更新の加速が求められそうです。

事故の衝撃は地域社会にも広がっています。労働組合は「安全の確保なくして操業はあり得ない」と強調し、環境団体も「徹底的な原因解明と情報公開」を求めています。住民の中には「長年の雇用先だが、安心して働ける環境が必要」との声もあり、信頼回復は急務です。

今回の爆発事故は、米国の老舗製鉄拠点でありながら度重なる安全問題を抱える施設の実態を浮き彫りにしました。原因解明と再発防止策の実効性、そして新体制下での安全文化の構築が、地域と企業双方にとって避けて通れない課題となります。

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