
高級ミニバンの代表格「アルファード」や「ヴェルファイア」、さらに不動の人気を誇る「ランドクルーザー」――。これらの新車を購入する際に、車体とは直接関係のないサービスや契約を条件としていたとして、公正取引委員会は4月10日、トヨタ自動車の販売子会社であるトヨタモビリティ東京(本社:東京都港区)に対し、「独占禁止法に違反する恐れがある」として警告を出しました。
購入条件は“必須”だった? 抱き合わせ販売の実態
今回、問題とされたのは、車の購入時に以下の4つの条件を事実上“抱き合わせ”で提示していたことです。
- トヨタモビリティ東京が販売するボディーコーティングの購入
- トヨタファイナンスとのクレジット契約の締結
- 特定の自動車保険への加入
- 定期点検パックへの加入
これらはいずれも本来、消費者が自由に選べるべきオプションや金融商品ですが、同社では「これらを契約しなければ車は販売できない」とするような運用があったとされます。期間は少なくとも2023年6月から2024年11月まで。人気車種の購入希望者にとっては「仕方なく条件をのむしかない」状況が生まれていた可能性があります。
「選択の自由」奪う販売方法に、公取委が“待った”
抱き合わせ販売は、独占禁止法が禁じる「不公正な取引方法」にあたる可能性があります。消費者が本当に必要とするサービスではなく、販売側の都合でセット販売を強制することで、市場の公正な競争がゆがめられるからです。
公正取引委員会は、「消費者の選択の自由が損なわれ、公正な競争を妨げる行為であり、看過できない」として、トヨタモビリティ東京に対し警告を出すとともに、トヨタ自動車本体および日本自動車販売協会連合会にも、再発防止と独禁法の遵守徹底を求めました。
新車より高い? プレミア価格の人気車が背景に
なぜこのような販売手法が行われていたのか。その背景には、今回対象となった3車種の“異常な人気”があります。
特にアルファードとヴェルファイアは、国内外で高い需要を誇り、新車の納車までに1年以上かかるケースも珍しくありません。そのため中古車市場では、新車価格を上回る“プレミア価格”で取引されることもあるほどです。
ランドクルーザーも、耐久性やリセールバリューの高さから人気が根強く、納車待ちは長期化。こうした需給バランスの崩れが、「買いたいならこの条件も」という販売側の姿勢につながったと見られます。
トヨタ子会社「真摯に受け止める」 販売手法の見直しへ
警告を受けたトヨタモビリティ東京は、「ご指摘を真摯に受け止め、再発防止に努めてまいります」とコメント。今後は販売方法の見直しが迫られることになります。
トヨタ自動車本体も「グループ全体で法令順守を徹底する」とし、公取委の要請に応じて対応を進める方針です。
業界に広がる“セット販売” 構造的問題も
実は、こうした抱き合わせ販売はトヨタに限られた話ではありません。人気車種を中心に、納車を早める見返りに高額なオプションの購入を求められるなどの“条件付き販売”は、自動車業界全体でしばしば指摘されています。
特に昨今は半導体不足や物流の混乱などにより、新車の供給が不安定になりがち。こうした事情が、ディーラーに「選べる立場」という錯覚を与えているとも言われています。
消費者への影響と今後の動き
今回の警告は、販売現場における消費者の不利益を是正するための重要な一歩です。公正取引委員会は今後も監視を強化し、同様の事案があれば調査や指導に踏み切る方針です。
一方、私たち消費者も、車を購入する際に「それ、本当に必要ですか?」と一度立ち止まって考える姿勢が求められます。販売店が提示する“条件”が不当だと感じた場合は、公取委や消費者庁などに相談することも選択肢の一つです。
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