六麓荘に広がる変化:中国人富裕層の進出と住民の不安

六甲山の麓、兵庫県芦屋市の「六麓荘(ろくろくそう)」は、1928年に開発された日本屈指の高級住宅街です。元々は大阪の富商たちが、六甲山の美しい景色を楽しむために開発した別荘地で、今ではその名を聞くだけで高級感が漂う場所として知られています。しかし、最近ではその地域性が大きく変わりつつあります。特に中国からの富裕層が増え、この地域にどんな影響を与えているのか、住民たちの間には不安の声も広がっています。

六麓荘の誕生とその魅力

六麓荘は、六甲山の自然環境を最大限に活かして開発されたエリアで、特に土地が広く、静かな環境が魅力です。元々の開発者たちは、ここに住む人々が豊かな自然を感じながら暮らせるようにと、広大な土地を一世帯ごとに分け、建物も規模が大きく、周囲との調和を大切にしました。例えば、電線を地中に埋めることで美しい景観を守り、屋根や壁の色にも制限があり、風景に溶け込むように設計されています。

この厳格なルールは今でも守られ、1区画あたり400平方メートル以上の土地が割り当てられ、建物の高さも地上2階、地下1階までと決められています。高台に住むほど、資産家としてのステータスが高くなるとも言われるこの場所に、今、変化の風が吹いています。

変わりゆく住民層

六麓荘には長年、医療や医薬品業界の創業家など、経済界で名を馳せた人々が多く住んでいます。例えば、小林製薬や武田薬品工業の創業家などの豪邸が並び、その住民たちは、一般的に「山の上の方が金持ち」と言われることもあるほどです。実際、六麓荘の中でも特に標高が高い場所にある豪邸ほど、家族の経済的背景が豊かなことが多いのです。

しかし、近年ではその顔ぶれに変化が現れています。以前はパチンコ業界のオーナーたちが引っ越してきたこともありましたが、最近では中国からの富裕層が急増しています。彼らは、5億円を超える価格を出してでも、このエリアに家を購入しているのです。

中国人富裕層の増加とその影響

中国人富裕層の進出に関して、住民の中には不安を感じている人も少なくありません。朝倉幸恵さん(仮名)は、六麓荘に30年以上住んでおり、その変化を肌で感じています。「コロナ禍の前から、ここにはパチンコホールのオーナーたちが引っ越してきましたが、最近は中国からの投資家が目立ちます。5億円でも、出すのをためらわない方々が多いですね」と語ります。

彼らが購入する物件は、すぐに取り壊され、新築の豪邸が建てられます。新しい家に住むと、近所の住民を招いてホームパーティを開くのが一般的です。これまではフランス料理のシェフを招くことが多かったのですが、最近では中国から招かれるシェフによる高級中華料理が振る舞われることが増えてきました。

一度中国人富裕層が購入した家は、転売されることが多く、日本人の手に戻ることは稀だと言われています。そのため、「このままだと、六麓荘はチャイナタウンのようになってしまうのでは?」という懸念の声も少なからず上がっています。

日本人富裕層の住まいの変化

また、日本人富裕層の動向にも変化が見られます。特に高齢化が進む中、山の上にある広大な土地よりも、平坦で駅近の便利な場所を求める傾向が強まっています。六麓荘の住民たちも、年齢を重ねるごとに、生活の利便性を重視して、阪急線やJR線の駅近エリアへ住み替えを進めています。そのため、六麓荘から「山を降りる」富裕層が増え、反対に外国人富裕層は「山へ登る」ようになっています。

このように、日本人富裕層と外国人富裕層の住む場所が逆転しつつあることは、六麓荘の今後を大きく左右する問題です。


六麓荘は、今やただの高級住宅街ではなく、国際化が進む象徴的な場所となっています。中国人富裕層の進出が急速に進む中で、地元住民の間ではその影響を心配する声が上がっています。地域の伝統と雰囲気を保つために、この変化にどう向き合っていくかが今後の大きな課題となるでしょう。

「チャイナタウンになってしまうのでは」「日本人の手には戻ってこない」…ついに中国人富裕層が住み始めた最高級住宅街「芦屋・六麓荘」の住民の暮らしぶりと不安

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