平等院が無料荷物預かりを廃止 外国人観光客の迷惑行為と“手ぶら観光”の限界

手ぶら観光の裏側で起きた“想定外”の迷惑行為 世界遺産・平等院が荷物預かりを中止した理由

観光客に優しい取り組みが裏目に

京都・宇治の世界遺産「平等院鳳凰堂」は、外国人観光客の間で高評価だった“無料の大型荷物預かり”サービスを今年5月に取りやめました。観光客がスーツケースを預けて身軽に拝観できると話題になり、SNSや旅行クチコミサイトでも広まっていたこのサービス。しかし、施設の想定を大幅に上回る利用が集中し、現場は対応に追われていました。

そもそもこのサービスは、少しでも快適に参拝してもらいたいという思いから始まりました。担当者によれば「最大でも6個程度までしか預かれず、スペースには限界があった」とのこと。それでも、口コミを通じて“無料ロッカー代わり”として使われるようになると、荷物を預けたまま平等院の外に出て、他の観光地へ行ってしまう利用者も現れたといいます。

「駅やホテルに預けてから来てほしいのが本音です」

そんな声が現場から聞かれるようになり、やむなく5月10日から無償の預かりサービスを中止する決断を下しました。

荷物預かり中止後もなお続くスーツケース観光

無料サービスがなくなった今でも、スーツケースを引きずって平等院を訪れる観光客の姿は後を絶ちません。そこで平等院側は代替策として、有料の大型ロッカー(スーツケース対応型)を導入。現在は16個まで収納可能ですが、繁忙期にはすぐに満杯になってしまう状況です。

対応にあたる執事は「荷物の多い方は、できるだけ駅や宿泊先に預けてからお越しいただくのがベストです」と話しています。

京都市も後押し「手ぶら観光」への動き

観光客の増加に伴うトラブルは、平等院に限ったことではありません。京都市では、街全体の“観光公害”を緩和するため、「手ぶら観光」を積極的に推進中です。市が運営する情報サイトでは、荷物預かりサービスや配送業者の紹介、各駅のロッカー配置などを多言語で案内。観光地でもチラシ配布やポスター掲示などの啓発活動が広がっています。

今後は京都駅において、ロッカーの位置や預かり所の混雑状況を一目で確認できる「デジタルマップ」の整備も計画されています。市の担当者は「特に外国人観光客の方には、安全性をきちんと伝えることが必要」として、安心して荷物を預けられる環境づくりにも力を入れていくとしています。

ネット上の声:好意が仇に?

SNSや掲示板では、平等院の苦渋の決断に対し、様々な声が上がっています。

「観光客の利便を思って始めたサービスが、迷惑行為で終わるのは残念すぎる」
「無料サービスはありがたいけど、それを当たり前と思う人が増えたら限界がくるよね」
「そもそも“無料で預かってもらえる”という情報が広まりすぎたのが問題」
「京都に行くなら最初から荷物預けるのがマナーでしょ」
「一部のマナー違反で良いサービスが消えるのはもったいない」

こうした意見からも、観光地と訪問者の信頼関係がいかに繊細であるかがうかがえます。

今後求められる「観光と共存するマナー」

今回のケースは、単なるサービス終了の話にとどまりません。訪日客が年々増加する中で、「観光の自由」と「地域の秩序」はどう両立すべきかという問いが、いま改めて投げかけられています。

観光地が本来持っている「文化的価値」や「精神的体験」を損なわずに、訪れる側も快適に楽しむためには、行政や施設側の整備だけでなく、観光客一人ひとりの行動意識の変化も求められているのです。

平等院の今回の判断は、日本全体の観光政策にとって、重要な“前例”として位置づけられるかもしれません。

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