
憲法改正が「選挙の軸」になった理由
2026年2月8日に投開票を迎える衆院選では、物価高や社会保障と並んで、「憲法改正」をどう考えるかが、政党選びの分かれ目になっています。背景にあるのは、安全保障環境の緊張、災害や感染症など“非常時”への備え、そして政治の決め方そのもの(国会や選挙制度)をどうするか、という不安と焦りです。各党は「今の憲法を守るのか」「どこをどう直すのか」「直すなら急ぐのか慎重に進めるのか」で、はっきり色が分かれています。
争点は3本柱:自衛隊明記・緊急事態・9条
今回の「憲法改正」論議は、だいたい3つの論点に集まります。1つ目は自衛隊を憲法にどう位置付けるか。2つ目は大災害や感染症などの非常時に、国会機能や人権をどう守るか(緊急事態をめぐる設計)。3つ目は9条をどう扱うかです。
同じ「改憲」でも、方向は真逆になり得ます。たとえば非常時の条文は、設計を間違えると権力が強くなりすぎる危険がある一方で、何も用意しないと国会が止まる不安が残ります。だから各党は「何を守って、何を動かすか」を強調します。
主要政党の公約比較表(衆院選2026・憲法改正)
| 政党 | 立場(大枠) | 重点ポイント(要旨) |
|---|---|---|
| 自由民主党 | 改正推進 | 自衛隊明記/緊急事態対応/合区解消・地方公共団体/教育の充実を4項目の柱に改正を目指す |
| 日本維新の会 | 改正推進 | 9条改正を掲げ、国会発議の実現を目標にする |
| 中道改革連合 | 慎重推進(議論深化) | 立憲主義・基本原理を堅持しつつ、権利保障や自衛隊の位置付けなどを踏まえ「責任ある改正論議」を深める |
| 国民民主党 | 条件付き改正 | 緊急事態でも「絶対に制限してはならない人権」を明記し、国会機能維持のための改正を主張 |
| 日本共産党 | 改正反対 | 9条を守り、改憲の動き自体を止める立場 |
| れいわ新選組 | 改正反対 | 緊急事態条項新設を狙う改憲発議を徹底して阻止し、現行憲法の活用で生活向上を訴える |
| 参政党 | 「創憲」推進(ただし条項は選別) | 国民が憲法を創る「創憲」運動を推進。感染症のまん延を含む緊急事態条項には反対 |
| 減税日本・ゆうこく連合 | 不明(未掲載) | 収集時点でマニフェスト未掲載として調整中 |
| 日本保守党 | 改正推進 | 9条改正(2項削除、自衛のための実力組織保持明記) |
| 社会民主党 | 改正反対 | 9条に基づく平和外交を掲げ、安保法制の廃止を主張 |
| チームみらい | 基本原理堅持+改正も視野 | 国民主権・基本的人権・平和主義を堅持しつつ、時代に合わせ改正も視野に検討 |
各党の公約内容と解説(憲法改正)
自由民主党
改憲の「優先順位」を明確にして前へ進める型です。自衛隊の明記は、現場の実態と憲法解釈のねじれを整理する狙いが中心です。緊急事態対応は、災害や感染症などで国会や行政が止まらない仕組みづくりを意識しています。合区解消・地方公共団体は「統治の形」、教育の充実は「国が何を支えるか」を憲法レベルで押さえたいという発想です。争点は、非常時の権限設計をどれだけ厳格に歯止めできるかに集まります。
日本維新の会
9条改正を前面に出し、国会発議を実現する政治日程を重視します。改憲に踏み込むことで抑止力を高めたい、という直球の主張になりやすい一方、国民投票に至るまでの合意形成をどう作るかが実務の壁になります。
中道改革連合
言い方は「改憲の推進」よりも「改正論議の深化」です。立憲主義や基本原理を守ると明言しつつ、国民の権利保障や自衛隊の位置付けを議論し、責任ある形で論点整理を進める構えです。急いで条文を変えるより、国会で争点を詰める路線と言えます。
国民民主党
ポイントは「緊急事態でも削れない人権」を憲法に書く、という逆方向の発想です。非常時に権力を強めるのではなく、むしろ“守るべき最低ライン”を明文化して、国会機能も止めない形を探ります。緊急条項が「危ないから反対」だけで終わらず、「こういう形なら安全」という設計論に寄せているのが特徴です。
日本共産党
9条を守ることを中心に、改憲そのものを止める立場です。安全保障は軍事ではなく外交で、という軸がぶれません。改憲論議が進むほど警戒感が強まり、「国民の暮らしの議論が後回しになる」という問題提起を重ねます。
れいわ新選組
緊急事態条項の新設を狙う改憲発議を、国会内外で徹底して阻止する姿勢を示します。現行憲法を使い切って生活を上げる、という言い方で、条文改正より政策運用を優先します。非常時の制度設計よりも、「非常時を口実に権限が膨らむ危険」に焦点を当てるタイプです。
参政党
「創憲」という言葉で、国民が憲法を作る運動を前に出します。一方で緊急事態条項については、感染症のまん延を含める形には反対を示しており、何でも権限を集める設計には距離を取っています。改憲・創憲の旗は振りつつ、条項ごとに選別する姿が見えます。
減税日本・ゆうこく連合
現時点ではマニフェスト未掲載として「調整中」とされ、比較表では不明扱いになります。憲法改正は言葉の強さだけでなく条文設計が重要なので、公開文書が出た段階で再確認が必要です。
日本保守党
9条2項を削除し、「自衛のための実力組織保持」を明記する立場を明確にしています。議論の焦点は、抑止力を条文で強める考え方にどれだけ国民合意が乗るか、そして周辺国との緊張管理をどう説明するかです。
社会民主党
9条を土台に平和外交を進め、安保法制の廃止を掲げます。改憲で対応するより、現行憲法の理念に戻すことで安全保障と人権の両立を図る立場です。
チームみらい
基本原理(国民主権・基本的人権・平和主義)を堅持した上で、時代の変化に合わせ改正も視野に検討するとしています。「守る」と「見直し」を同居させ、広い合意を探る姿勢です。具体化の段階では、どの論点を優先し、どこに線を引くかが問われます。




















