米国の追加関税が日本企業に与える影響:中国からの生産拠点移管が進行中

2025年1月20日にトランプ米大統領が就任し、米国の貿易政策に大きな変化が予想されています。特に、中国製品への10%の追加関税が2月1日から課される可能性があり、これが日本企業に与える影響が懸念されています。多くの日本企業は、米国市場への輸出において中国を生産拠点として活用しており、関税引き上げによりコスト負担が増加する恐れがあります。

例えば、大阪府吹田市に本社を置く計測器メーカーの日本カノマックスは、中国で製造した主力製品「パーティクルカウンター(微粒子計測器)」を米国へ輸出しています。しかし、米国が中国製品に25%の関税を課した際、販売価格への転嫁が難しく、利益が圧迫されました。さらに関税が引き上げられる可能性があるため、同社は生産拠点を中国から日本へ移管する方針を検討しています。具体的には、2025年2月か3月には吹田市の拠点で一部生産を開始し、「メイド・イン・ジャパン」として米国へ輸出する計画です。また、部材調達の見直しや設備投資を通じて、日本の生産能力を拡大する方針も示しています。

他の企業でも、生産拠点の移管が進んでいます。リコーは、米国向けに中国・上海や広東省で製造していた複合機などの一部生産をタイに移すことを検討しています。カシオ計算機も、米国向け一部製品の生産をタイに移転しており、腕時計の一部は現在も中国で製造しています。田村誠治執行役員は、年間数億円の影響があるとし、生産代替策の検討が必要であると述べています。

外務省のデータによれば、2023年10月1日現在、日本企業の中国での拠点数は3万1060に上ります。さらに、トランプ大統領は、日本企業が生産拠点を持つメキシコなどにも高関税を課す考えを示しており、実現すれば影響が大きくなる可能性があります。

このような状況を受けて、日本企業は米国の追加関税に備え、生産拠点の再編やサプライチェーンの見直しを進めています。ジェトロの調査によれば、多くの日本企業が米国市場への輸出において中国を生産拠点として活用しており、関税引き上げによりコスト負担が増加する恐れがあります。そのため、生産拠点の移管やサプライチェーンの見直しが急務となっています。

また、トランプ大統領はメキシコやカナダからの輸入品に対しても関税を課す考えを示しており、日本企業のメキシコでの生産拠点にも影響が及ぶ可能性があります。特に、自動車産業ではメキシコから米国への輸出が多いため、関税引き上げが大きな影響を与えると考えられます。ホンダはメキシコに年間約20万台の生産能力を持ち、その8割を米国へ輸出しています。青山真二副社長は、米国がメキシコからの輸入品に関税をかけた場合、大きな影響があると述べています。

このような状況に対処するため、日本企業は生産拠点の多様化やサプライチェーンの再構築を進めています。しかし、これらの対応には時間とコストがかかるため、短期的な影響を最小限に抑えるための戦略が求められています。また、米国の関税政策が今後どのように変化するかを注視し、柔軟な対応が必要です。

総じて、米国の追加関税は日本企業にとって大きな課題となっています。生産拠点の移管やサプライチェーンの見直しを通じて、影響を最小限に抑える努力が続けられています。しかし、これらの対応には時間とリソースが必要であり、今後の米国の関税政策の動向を注視しながら、柔軟かつ迅速な対応が求められます。

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