
外国免許切替、過去最多7万6千人 制度の課題と見直し検討へ
警察庁が発表した令和6年の運転免許統計によると、外国人が母国の運転免許証を日本の免許証に切り替える「外国免許切替(外免切替)」の取得者数が7万5905人に達し、過去最多を記録した。これは10年前の平成26年(2014年)に比べて約2.5倍に増加している。外国からの訪日者の増加や、国際交流の進展が背景にあるとみられる一方、制度上の課題も浮き彫りになっている。
外免切替制度の概要と現状
外免切替は、外国で有効な運転免許証を持つ外国人が、日本の免許を取得するための制度。申請者は、母国の免許証とその翻訳書類を提出し、適性検査(視力・聴力など)と知識確認(学科試験)、技能確認(実技試験)を受ける。ただし、日本と相互に免許の切替を認め合う29の国・地域出身者は知識確認と技能確認が免除される。
令和6年の統計によれば、申請者は15万3949人で、そのうち合格者は7万5905人。10年前の平成26年には3万381人だったため、急増が明らかだ。特に東京都内の運転免許試験場では、申請希望者が連日長蛇の列をなす状況が続いている。
制度の課題と安全面での懸念
外免切替が急増する一方で、以下の課題が指摘されている。
試験の簡易さ
学科試験は10問中7問正解で合格となり、内容も基本的な交通ルール確認にとどまるため、十分な理解がないまま取得するケースが懸念される。特に、29の国・地域出身者は試験が免除されることから、運転技術や日本の交通ルールの理解不足が問題となる可能性がある。
住所要件の緩さ
外国人は住民票がなくてもホテルの住所を申請時に使用できるため、短期滞在者でも免許取得が可能。これにより、日本で実際に生活していない者が免許を取得し、運転する事例も確認されている。
不正行為の可能性
SNS上では「外免切替の攻略法」や申請代行業者による書類偽造、虚偽申請が横行しているとの指摘がある。特に一部のブローカーが高額な手数料で手続き代行を行い、偽造書類を使用する事例が報告されている。
交通事故のリスク
外国人ドライバーによる交通事故は、2014年の6,298件から2024年には6,367件に増加。外国人の事故率は日本人よりも高い傾向が見られることから、安全性の向上が求められている。
政府の対応と見直し検討
坂井学国家公安委員長は3月の国会で、外免切替制度に関する問題を認め、見直しを検討する方針を表明した。具体的には以下の改善が議論されている。
学科試験の内容見直し
難易度を引き上げ、より実践的な交通ルールの理解を確認する方向で調整中。
住所要件の厳格化
ホテル住所を使用するケースへの対策を検討。
申請手続きのオンライン化
申請者の本人確認を強化し、不正申請の防止を図る。
また、警視庁では令和6年10月から申請の予約制を導入。混雑緩和を図るとともに、申請者の確認を徹底する措置が取られた。2025年3月からはオンラインでの予約受付も開始し、手続きの効率化が進められている。
今後の展望
外免切替は、訪日外国人の増加に伴い、今後も高い需要が予想される。しかし、制度の利便性を優先するあまり、安全面が軽視されることがあってはならない。制度の見直しが進む中で、関係機関の適切な運用と外国人への交通ルール教育の徹底が求められる。