【2029年供用開始】成田空港が滑走路延伸・新設に本格着工|空港面積2倍・発着能力50万回へ

成田空港が大変貌へ 本格着工の滑走路延伸・新設で発着能力2倍に 訪日需要に対応

訪日客増に対応する空の玄関口

千葉県にある成田空港が、かつてないスケールでの拡張工事に踏み出した。2025年5月25日、成田国際空港会社(NAA)は、B滑走路の1,000メートル延伸および新たなC滑走路(3,500メートル)の建設に本格着手。空港全体の面積も約2倍となるこの計画は、日本の空港インフラを抜本的に進化させるものであり、観光・ビジネス両面での航空需要の高まりに応えるものだ。供用開始は2029年3月末が予定されている。

式典には国や県の関係者も出席 地域との連携も強調

NAA本社で行われた着工式典には、国土交通省の古川康副大臣や熊谷俊人・千葉県知事など、官民の関係者約70人が出席。ショベルを使った「くわ入れ」セレモニーで、工事の安全と成功を祈願した。NAAの田村明比古社長は挨拶で「訪日外国人観光客の増加に応える体制づくりが急務。安全第一で計画を着実に進めていきたい」と力強く述べた。

延伸と新滑走路新設で、年間50万回の発着が可能に

今回の事業でまず注目されるのが、滑走路の規模と数の変化だ。現在、成田にはA滑走路(4,000メートル)とB滑走路(2,500メートル)の2本があるが、B滑走路は北側へ1,000メートル延長され、3,500メートルに。さらに、3本目となるC滑走路(同じく3,500メートル)が空港南側に新たに建設される。これにより、成田空港の年間発着可能回数は30万回から50万回に拡大し、アジアでもトップクラスの発着容量を誇るハブ空港に成長する見込みだ。

空港面積も倍増、貨物・旅客の両面で大規模機能強化

NAAの発表によれば、すでに全体用地の83%を確保済みで、完成後の空港面積は従来の1,100ヘクタールから2,297ヘクタールへと倍増。航空貨物の集積・処理能力も格段に向上する。これにより、日本を起点としたグローバル物流の拠点としての地位も一段と強まる。物流、観光、地域産業など多方面への波及効果が見込まれている。

地域共生と環境対策の両立も目指す

成田空港の拡張は、単に交通インフラの強化にとどまらず、周辺住民や地域との調和にも力が注がれている。特に騒音対策としては、住宅への二重窓設置助成や住宅防音工事の補助金制度などを拡充。説明会や地元自治体との協議を通じ、丁寧な合意形成を進めてきた。工事エリアには軟弱地盤が多く存在するため、C滑走路では地盤改良工事も並行して行われる。

旅客動線の再構築「ワンターミナル化」も視野に

NAAは今回の滑走路増設と並行して、「新しい成田空港」構想を掲げている。その一環として、現在の第1・第2・第3ターミナルを統合した「ワンターミナル化」の検討が進められている。これにより、乗り継ぎや入出国の動線が効率化され、旅客の利便性が大幅に向上する見込みだ。国際空港としての競争力を高め、成田を拠点とする航空会社や利用者にとってもメリットは大きい。

訪日外国人観光客増とLCC拡大への対応

日本政府は2030年に訪日外国人旅行者数を6,000万人に増やす目標を掲げており、それに対応するインフラ整備は不可欠だ。LCC(格安航空会社)を中心とした近中距離路線の拡大や、アジア諸国とのビジネス需要の増加により、成田空港の需要は再び高まっている。パンデミック後の回復を背景に、空港の受け入れ能力を抜本的に引き上げる必要があると、業界内でも評価されている。

地域経済への貢献と懸念のバランス

拡張事業によってもたらされる経済波及効果は、建設投資や雇用創出だけにとどまらず、空港利用者の増加による観光収入や物流収益の増加にもつながる。一方で、騒音や交通渋滞といった生活環境への影響を懸念する声もあり、住民との対話が今後の鍵を握る。

2030年代の「空の日本」再構築へ

世界的に見ても、航空インフラの整備競争は激化している。韓国・仁川空港や中国の北京大興国際空港など、アジアの主要ハブ空港はすでに大規模拡張を実現済みだ。日本も取り残されないためには、成田空港の進化は避けて通れない。

今回の滑走路整備は、その第一歩にすぎない。航空機の大型化やゼロエミッション機の導入、空港周辺のスマート化など、未来の空港像に向けて進化を続ける必要がある。

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