
中国が進める人材招致プロジェクト「千人計画」に、日本の研究者44人が関与していたことが明らかになった。日本政府からの研究助成を受けた後に中国の軍事関連大学で研究を続けたケースもあり、政府は規制強化を検討している。情報流出を防ぐため、スパイ防止法の制定も急務とされている。
千人計画:優秀な人材を中国に引き込む国家戦略
中国の「千人計画」は、海外から優秀な研究者を積極的に招致する国家プロジェクトだ。2008年に開始され、高額な報酬や研究資金の提供、研究環境の充実を武器に、各国からトップクラスの研究者を引き込んでいる。
今回明らかになった日本人研究者44人のうち、13人は日本政府からの研究助成(科研費)を1億円以上受け取っていた。最も多いケースでは、7億6,790万円に上る助成を受けた後、中国の大学で研究を続けた。
これらの研究者の多くは、中国軍に近い「国防7校」と呼ばれる大学に所属し、ロボット工学や人工知能(AI)など、軍事転用が可能な先端技術を研究していた。特に北京理工大学や北京航空航天大学は、軍事技術研究を進める中国の主要機関として知られている。
日本政府の対応:規制強化へ
日本政府は今回の事態を受け、研究者が海外の人材招致プログラムに参加する場合、その情報を開示する義務を設ける方針を打ち出した。これは、政府が資金を提供する研究者が、無断で他国のプロジェクトに関与しないようにするための措置だ。
また、米国が既に導入しているように、外国から一定額以上の資金を受け取った場合に報告を義務付ける仕組みも検討されている。米国では、中国の千人計画が機密情報の流出に関与しているとして厳しい監視体制が敷かれており、日本もこれに倣う形となる。
しかし、現時点ではスパイ行為そのものを直接取り締まる法律が日本には存在しない。1985年に「スパイ防止法案」が提出されたが、人権侵害の懸念から廃案となった経緯がある。その後も再提出の動きは見られず、今回の事態を受けてスパイ防止法の制定が再び求められている。
スパイ防止法の必要性:安全保障への重大な脅威
日本にスパイ防止法が存在しないことは、情報流出を防ぐ上で大きな問題だ。現行法ではスパイ活動そのものを禁止する明確な法律はなく、現行の刑法や国家公務員法などに違反しない限り、スパイ活動は摘発できない。
千人計画への関与が明らかになった研究者の一部は、中国軍事関連大学に所属し、軍事技術につながる研究に従事していた。ロボット技術やAIは軍事用途にも応用可能であり、これらの技術が流出すれば日本の安全保障に重大な影響を及ぼす可能性がある。
ネットユーザーの反応:「スパイ防止法が必要」「技術流出に危機感」
SNS上では、千人計画への日本人研究者の関与が明らかになると、多くの批判や懸念の声が上がった。
「研究者が中国の軍事研究に関わっていたなんて…」
「日本政府から助成金をもらっておいて、中国に技術を渡すなんて信じられない」
「政府はもっと早く規制を強化するべきだった」
「スパイ防止法がない日本は、情報漏洩リスクが高すぎる」
「日本の技術者を高額で引き抜く中国…恐ろしい」
スパイ防止法の制定を急ぐべき
今回の千人計画への関与問題は、日本の安全保障において重大なリスクを浮き彫りにした。政府は研究者の海外活動に対する規制を強化する方針を示しているが、それだけでは不十分だ。スパイ防止法の制定が急務であり、国家の安全を守るための法的枠組みを整備する必要がある。
同時に、研究者自身も自らの研究がどのように利用されるかを意識し、責任ある行動を求められる。科学技術の発展が国家安全保障に直結する現代において、透明性と安全性を確保するための法整備は不可欠だ。